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323 ただいま、竜の国1

「起きろ、小娘」

代償の竜王の声が、頭に響く

うるさい、と言いたくなっちゃうぐらい、大きな声で

ぱちりと目を覚ました


「別れを告げろ」

お別れ?


目をあけて、その世界は、水の中

空気の膜と暖かな水


「ただいま、水の王さま」

そう言うと、苦笑する気配とともにおかえり、との声

そのやりとりに、代償の竜王のガミガミ叱るうるさい声が響いたけど

水の王さまが何かを言ったようで静かになった


「少し、変わったな

 心が決まったせいだろうな

 お前に、渡したい物がある」


そう言った途端目の前にある水の王さまの体というべき

木がばらりと崩れた


中からは、その木でできた腕輪

竜の花と言われる蓮ににた形が精密に彫られていた

受け取り、腕にはめると

水の王さまは、嬉しそうな気配を放つ


ばらばらになった木々にのこる竜の花が

かすかな光を放っていて

その光もちかちかと今にも途切れそう


「お前に祝福を」

そう、言う水の王さまの声は遠い


「水の王さま?」

私が、呼びかけても、水の王さまからの返事はない


「お前が来てから楽しかったよ

 じゃぁな」


そう、いった途端、ふっと世界が変わった


柔らかで暖かな水

そして、その包み込むような世界が

急に冷たい水に変わったような

喪失感が生まれる感覚


え・・・何・・・なに・・・?


何かを失ったような気がして

ぼろぼろと涙がこぼれる

理由は分からない

だけど、ただ哀しい


「お前には、説明が必要だろう

 水から上がれ

 その膜もまもなく消える」


そう、響く代償の竜王の声

その声と同時にぱちんと、泡ははじけ

ぷくぷくと上へと向かって行く


水から上がり、

服置き場から服をとりだす

何も変わってないその様子だった


白い壁と砂の中、水の王さまの木に似た

私を喚んだ代償の姿の木


その前に座ると、竜の王さまは話はじめた


「お前をもう一度喚ぶには、あれしか方法が無かった

 お前と我らとの絆は浅い

 だが、お前がいう水の王とはお前は絆が深かった

 竜の花を咲かせるほどにな」


水の王さまの7色の竜の花

それは、水の王さまが許された証

そして、それは、愛された証でもあった


私は水の王さまが大好きだった

代償たちは、むしろ諸悪の根源だったし

第一印象が悪かったし、私とあまり話してくれなかったもんね


だから、相談はことある毎に、水の王さまにしていた

よく泣きに行ったし

その度に、空気の泡で出迎えてくれて、落ち着くまで話を聞いてくれた

むしろ、愛されたのは私の方だとおもうけど・・・

それでも、水の王さまは、愛されたと竜のみんなは言う


「あのお方の力は強い

 代償として、千年以上すぎても、まだその命はあった

 それ故に孤独を知り、そして、そのあまりある命の力を竜の国のために使った

 お前の水の剣もそうだ

 あのお方が、暇にあかせて作ったものだが

 それは、お前のためになったようだったしな・・・」


憎まれ口しかきかない、竜の王が

しんみりと、語っている


それにうなずき返しながら、

水の王さまも、この竜の王さまと同じように若い時に代償の木になっんだろう

そして、竜らしくこの地を護り愛し続けた

ってことよね・・・


「そして、お前が、代償を許すほどの愛を注ぎ

 あの方は許された

 世界に、そして、その許された命と、我の命を賭して

 お前を再召還した」


「そして、あの方は逝った」


そう聞いた瞬間

すべてを理解した


砕け散った破片

それに残る竜の花の弱々しい光

地球で話す度に、どこか哀しそうで

そして、愛おしそうに私に語りかけていたのは

自分の最後を知っていたから


竜の国のためであり

私のためにでもある

この再召還


最後の使命として水の王さまはしてくれた


ぼろぼろと泣く私に

泣くな、幸せだったぞ、あの方は


そう、代償の竜の王は言ったけど

その声も涙に濡れた声だった


今日は何もいいますまい

http://enq-maker.com/60uNP00

【アンケート第七弾】 水の王さまについて(2011.2.5)

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