322 世界の境界線7
「はい、佐藤先生」
そう言って、おなじみの黒い鞄から出てきたのは
分厚い絵本用の紙に印刷された一冊の本
「これが完成品です」
何度か、カラー印刷していたものはみたし、家族にも見せたけど
商品となり、ISBNが振られ、バーコードまでついたものだった
三木さんは粘り強くお願いして
私の担当になってくれた
かよ子さんからの口添えもあったみたいだけど
三木さんも、かよ子さんも何も言わない
僕が担当ですから
って、きらきらした笑顔で言われて、せっせと、私に連絡をくれた
編集長も、多忙の中
一言二言くれて、私を見守ってくれた
そして、完成した一冊の絵本
「まぁるいわ」
ひらがなで、まぁるいわ
輪であり話であり和であるから、わだけひらがなにしようとおもったら
全部ひらがなにするといいと言われた
ちっちゃな子は、文字をひとつずつ読む
でも、大人は、全体で文字を読む
そうした時に、その意味を考えてしまうから
文字をかってに入れ替えたりしてしまうけど
それこそ、大人と子供の違い
違いを楽しんでもらって、
昔の自分、今の自分、そして、未来の自分を考える話へと
入っていってもらえたらいいね
なんて、話ていた
まわる岩とか、まるいわとか、いろいろ読まれちゃうだろうけどね
あと、題名が覚えて貰いにくいわよ
と、編集長に釘を刺されたのは、苦い思い出かも
明日書店に並ぶ、
そう、季節は12月
あれから、私は、いろんな人に会いに行った
布を作ってもらってた長尾さんたち
しばらく、活動ができなくなりそうだからといったら
子供が大きくなったらもっかいすりゃええなんて、勘違いされちゃった
三木さんには、お話を読み聞かせして
発売前に持って行かせて貰った
図書館にも寄贈する予定になってる
弟妹たちは、私のマンションに泊まりに来たし
その時に社長や篠山さんとも会った
弟たちと、盛り上がってたのが気になるけど
何話してたのか、未だ秘密
あとは、社長と篠山さん
しぶ苦い顔して、決めてこいといった社長と
困ったように笑って、放したくないんだよとささやいた篠山さん
私も、離れたくないと思ってしまう二人
それでも、夢を、私の歩く道を認めてくれる人たち
後悔するな、そう社長は言った
まずは、やってからだよね、と篠山さんが笑う
そうやって二人は生きてきたんだろう
りっちゃんと私はそんな関係になれるのかな
そう、考えさせられる二人の関係
二人の間にわってはいることできないと思った時期もあったけど
入ってみたら楽しかった
ちょっと、過激なこともあったけど
それもいい経験
そして、今日、私は、旅立ちます
書店に自分の本が並ぶところも見ずに
今何で、と言うのは、水の王さまが、今日と決めたから
行けるときに行かないと、どうなるか分からない
だから、今
「準備できたようだな」
水の王様の声が、紫の木に触れた瞬間きこえた
「はい、できました」
ぐにゃりと、貧血を起こしたような感覚とともに
私の意識は遠のいた
2話目
かける時にかいてアップしようー
明日あっぷーとかしたい所だけど、仕事で帰れないかもなので・・・