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321 世界の境界線6

私の心は、すとんと、はまるところにはまったように

悲しいとか、嬉しいとか、そんな感情より

ああ、決まった、と思えた


どちらの世界も大好きで、

どの夢も捨てがたくて

だけど、そのどれか1つしか選べないこと

それがちゃんと理解できて、

それを決める心づもりができ、いつになくすっきりした気分になってるのを感じる


毎日歩いた廊下

ガラス窓から見える風景にそんなに変わりないのに

どこか懐かしいような、

そして、新しいような、そんな風に思える


「かっこいいな」

ぼそりと、後から話しかけられてびくっとなった

「おはよ」

そう言って、静かに近づいてくる深徳が

昔みたいに、ぎゅっと抱きついた


少し大きくなってからは、恥ずかしいのか

他の子の手前なのか、譲ってるのか

そういうことをしなくなった


「親父じゃないけど、

 幸せに・・・なってくれ

 たとえ、会えなくても・・・・」

そう言った深徳の声は震えていた


そうして、ぎゅっと痛いぐらい抱きしめると

それは、唐突に終わり、だんだんと、踏みしめる足音で

深徳が、走り去って行くのが分かった


私の視界は、その時は滂沱する涙のせいと

顔を覆う手で、何も見えない

暖かな確かな優しさが、嬉しくて

そして、それが哀しくて

選択した自分のもてあました感情が涙となって出て行く


声を出して泣きたい

でも、そうしたら、誰かが起きて来るだろう

そうして、心配させてしまう

それがいやで、唇を噛んで、声を堪えた


涙が乾いたころ、ふらりと外に出た

いつも通った道

りっちゃんと、出会ってからもこの道だった

学校も、全部、近くにして

電車通学や自転車通学はあこがれだった


でも、みんなといられるのが、もっと大事だった


ふらふらと歩いていたら

いつの間にかにりっちゃんの家の前にたどり着いていた


「あれ・・・?」

つい、笑っちゃう

高校生の時みたいな気分でりっちゃんの家に来ちゃうなんて

そんな風に思って、帰ろうとしたら

「ユキちゃん」

そう、後からりっちゃんの声


「おはよう、りっちゃん」

「おはよう、ユキちゃん、こっちに来てたの?」

びっくり顔のりっちゃん

表情はあんまり変わってないけど

高校生のあの時より、ずっときれいで可愛くなった


「うん、話してきたの」

そう言うと、りっちゃんは何のことだかピンと来たようで

ちょっと歩こ、と歩き始めた


「こうやってると高校時代みたいだね」

同じことを考えて、二人して笑った


あの時と同じ道

制服は着てないけど、同じ道をたどって二人で通う道

公園をぬけて、道路を渡り

住宅街を抜ける


ゆっくりとした歩みの中、

私たちは、何も話さなかった

そして、高校の正門の前

振り返ったりっちゃんは不安そうな目をして

「決めちゃったの?」

と聞いた


「うん」

そう、声に出して応える

嘘はつきたくないし、揺らぎたくない


「最終決定は、竜の国に行ってからだけど

 前に進むこと、決めたの」

そう言うと、少し泣きそうな顔をしたけど

うんと、うなずいて

「その顔だったら、竜の国で元気でねって言える」

そう、りっちゃんは笑った


はじき出されて帰ってきた時の状態を知っている分

りっちゃんは、心配してくれてた


「なんで、決めなきゃだめかなぁと思うけど

 りっちゃんが、昔立った分岐点が

 私は、今なんだろうね」

そう言うと、こくりとうなずく

真剣なまなざし、あの当時のりっちゃんはひどくあれていた

一人で生きていきたい、一人で大丈夫

誰とも交流しないで頑なだったりっちゃん


今は、やさしくて、朗らかで素敵なりっちゃん

それは、あの高校時代にりっちゃんは選んだから

今のりっちゃんがあるんだよね


「もし、向こうに行ったら、寂しくなるね

 私は、こっちでがんばるね

 ユキちゃんと、一緒にやっていける夢はまだ捨ててない

 こっちでがんばるなら、一緒にしていこうね」


そう言ってりっちゃんはぎゅっと私を抱きしめてくれた

私も、りっちゃんを抱きしめる


ありがとう、私の親友

体現して、生きる道を見せてくれた大事な先生

他人からの流れで生きてる私のペースでいさせてくれてありがとう

私のペースで歩き始めた時もフォローしてくれてありがとう


りっちゃん、大好きだよ・・・


唐突に更新するのです・笑


なんか、涙編だなぁと思いました

それでは、またー

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