318 世界の境界線3
「あと、もう一つの夢は、その絵本の世界に行くこと」
そう言った瞬間、みんなの顔が、え?とか、は?という形に変わり
「何言ってるんだよ」と海人と咲良が騒ぎ
「詳しく」と深徳がいう
「あのね、信じられないことが起きたの
おねーちゃん、変わったねって言ってくれたよね
私は変わった自覚はないんだけど
変わったとしたら、“何か”をするようには変わったって思える」
その言葉に、全員が、深くうなずく
「それは、ね、
夢でみた国、私は竜の国って呼んでる国なんだけど
その国に行ってね、私はたまごのおかーさん役に任命されて
また子育てー、なんて思っちゃったの」
そう言った途端、おかーさんは、声を出して笑った
「そりゃぁ、適任でしょうとも」
「もー、おかーさんのせいだからね」
「教育よ、教育」
ふふふっと笑いながらおかーさんは、話の続きを聞きたがってる
「そこで、7人の子竜たちを育てたんだけど
そこと、ここの時間の長さは、違ってて
向こうの方がはやいから、子竜ちゃんたちが育ててあげられたの
竜は、千年以上生きる生き物だからって
向こうにも人がいるけど、私は、竜の方で暮らしてて
その暮らしとかは知らないけど
お手伝いしてくれる大人竜さんたちと、仲良く子育てできて
私のこちらでの夢につながったの」
「こちらでの・・・夢」
深徳が、そこを聞き逃さず繰り返す
うん、こっちでの夢なの
「何度も行き来して、りっちゃんに服みせてら、売ろうって話になって
イベントにもいったりしてたけど
突然いけなくなって、あと数回だって言われたの
いけなくなった瞬間、拒絶された気持ちになって
すごく、すごく辛かった
なのにね・・・私、子竜ちゃんたちとの約束を守れなくて
けんかしちゃったの」
「ファンタジーだなぁ、で、その約束って何?」
ゲーム好きの咲良は、話の理解が早い
「竜は戦いをして、優劣というか、会話をするんだって
みんなが、傷つくのがいやで、手を出しちゃったの
危ないから、しないでってお願いされたのに
お手伝いしてくれてる竜とは違う竜が来た時に
手を出して、おかーさんだから、守りたいっていった時
みんなから、返ってきたのは、護らなくていいってことと
おかーさんって何だったの・・・
だから、一番言っちゃ駄目なことば
大嫌いっていった途端、あの世界から押し出されちゃった」
「だから、ユキは、ふさぎ込んで
あの篠山さんっ方や、りっちゃんが心配してたのね」
おかーさんは、したり顔でうなずいてる
私は、それにうなずき返して話を続けた
「だけど、しばらくして、向こうから
大事な種が届いたの
その種は、向こうで私が、もう一つのお役目として預かってた種で
竜にも、あっちの世界では、とっても大事な木の種なの
それが、起きたら、私の所に届いてた
今も、私の部屋で育ってる
そして、向こうでお世話になった王様から連絡があったの」
「これが、ねーちゃんじゃなかったら
すげぇ作り話って言うけど
ねーちゃんにファンタジー要素なんてないからなぁ
雰囲気変わって、いろいろやってて
なんか、すげぇっておもってたけど、
異世界に行ってるとはなぁ」
咲良が、言ったその一言にどきりとした
そう、あそこは、近いと感じてたけど
異世界なんだよね
そして、その異世界をつなぐ道は、まもなく無くなる
「私ね、その異世界で、住んでみたいって思ってるの」
そう言った途端
ばんっと、扉が開いて
「そんなのっ、そんなのやだよぉぉぉぉ」
そう言って、目にいっぱいの涙がみるみるあふれて
ぼろぼろとこぼれ出す
隣の部屋で聞き耳たててたんだろう
それで、耐えきれなくなって、出てきて泣いてる
わたしの可愛い妹
そして、その隣には、その芙遊のスカートに握りしめて
泣いてる奈津
太郎くんと、ハナちゃん、そして次郎くんもみんな不安そうに見てる
「あのね・・・」
「おねーちゃんのばかーっ」
近づいた私をどんっと突き飛ばし
芙遊は、きびすを返して、走っていく
からり、と玄関の開く音
あの子、外に出て行っちゃった
「芙遊っ!!」
話をしていた全員が、立ち上がって
玄関へと向かう
空き放たれた扉
芙遊のお気に入りの靴のない玄関
「探してくる」
「オレもいく、手分けしよう」
「かーさんと、オレは、家で、こいつら見ておくわ」
喧噪にびっくりしたちびちゃんたちがわぁわぁと泣き始めて
佐藤家は、蜂の巣をつついた大混乱となっていた
ごめん、でも・・・でも、
嘘はつきたくないの
私は、そう思いながら、手分けして夜の街を走る
きっと、きっと、逃げ込むなら、あそこ
そう思って、私は走る
そして、見つけた、
芙遊がきてる服が、白い服で良かった
黒の世界の中、そこだけ灯火のように
まるで見つけられたがっているようにうっすらと白く光っていた
「芙遊、入るよ」
私はそう言って、ちっちゃな路地の向こうにある
鉄扉を開ける
きぃっと、音を立ててあいた
そこには、泣いてうずくまる芙遊
はみ出したスカートをはたいて
私も中に座る
たった一人の女兄弟
だからこそ、そのつながりは他より強いのかもしれない
抜けがございました・・・また馬鹿やりました・・・
そして、更新できませんでした・・・
それでは、寝ます