314 広がる世界13
「こんにちは~」
木の扉をあけると、かよ子さんの世界
甘い香りと、木の香り
森の中のお茶会のようで、それが、かよ子さんの雰囲気で
自然と頬が緩んじゃう
「あら、あら、いらっしゃい」
奥から聞こえて来た声に目を向けると
アンティーク風ワンピースのエプロンで手をぬぐいながらかよ子さんが
出てきた
「こんにちは、佐藤先生」
にこにこと三木さんも迎えてくれるけど
先生はやめてほしいかも・・・
「せ・・・先生はやっぱりやめませんかー」
なれません、と言うと
駄目です、ときっぱり断られちゃいました
ううう・・・なんか、まだそんな立場じゃないです
「あはは、ユキちゃん苦労するねぇ」
なんて篠山さんはのほほんと笑ってる
もぅっ人ごとだと思って!
「あ、かよ子さん、これどうぞ」
そういってエクレアを渡すと、ふわりと花が咲くような笑顔で
受け取ってもらえた
「やっぱり、女の子はいいわねぇ」
そう言ってかよ子さんは、うれしそうに笑う
「ユキちゃんにあえてうれしいわ
今日、くるって聞いてなかったらなおさらよ」
そう、言われて、あれ、と篠山さんを見ると
確信犯的な笑みをされちゃった
自分で、自分のことはしなさいって・・・いいたいのかな・・・
「かよ子さん、あの・・・ね」
そう言うと、先を促すようににこにこ笑って続きをまってくれてる
あれ・・・この感覚って、知ってる
家族が多くて、おしゃべりな人も多くて
私はどっちかというと、聞き手に回ることが多くて
しゃべる時といえば、みんなに呼びかけるとか
注意することが多くて、自分のことをしゃべるのがいつの間にか下手になってた
「ゆっくりでええ、自分の言葉で自分を飾ればいいんだよ」
そう言ってその自分の言葉を大事にしたおばさん
それから、私は、少しずつ話せるようになった
「私の今が、出来たんです
かよ子さんに、是非みていただきたいんです」
そう言うと、かよ子さんは、軽くうなずいて、私の鞄を受け取ってくれた
その仕草は、よくできました、といってるようで嬉しい
ぱちんっと、鞄を開いて、中を開くと
ふわりと、匂うパステルの香り
それが、かよ子さんから私の世界へと塗り替える合図のよう
かよ子さんのまなざしの柔らかさが研ぎ澄まされて行くのを感じて
私も緊張してくる
「うわぁ、きれいですねぇ
佐藤先生、仕上げてきましたねぇぇぇ~」
三木さんが、ほめてくれた
ありがとうー
「ちょっと、黙ってて」
ぴしゃりと、かよ子さんが言う
そのまなざしは、真剣そのもので、その雰囲気は、プロそのもので
私も、浮かれた気分を引き締めてかよ子さんに向き合う
ぱらり、ぱらりと一枚ずつ丁寧に
全体、詳細、視線は、細かな動きで、世界の中を動き回る
小さな竜とぱちりと目があったのか、その瞬間、かすかに
ほんのかすかにだけど、かよ子さんは、びっくりしたようにぱちりと
まばたきをした
ぱらり、ぱらり
世界が、めくられていく
そして、最後の紙を置くとかよ子さんは、私をじっと見る
ううう、テスト結果発表みたいで緊張するよ~
「ふふっ、そんなに緊張しなくていいのよ」
そういって、かよ子さんは、さっきまでの気迫をどこに脱ぎ捨てたのか
穏やかで、優しいいつものかよ子さんに戻っていた
「緊張しますよ~」
私が、そう言うと、それもそうよねぇ、なんておっとりと笑い
私の手をそっと、だけど、ぎゅっと包むように握りしめた
「ありがとう、ユキちゃん
貴女の世界を見せてくれて
私、このお話好きよ」
そう、ほめたあと、篠山さんや社長がいったように
輪郭のこと、全体的なメリハリ
目線の移動の仕方など、文字の配置の場所
そんな話を煮詰めて、私は恐れ多くもかよ子さんの仕事部屋で
かよ子さんの道具を使って、仕上げをさせて貰った
「やっぱり女の子はいいわねぇ」
にこにこと、かよ子さんが、隣で笑う
「私もすてきな人と出会えて嬉しいです」
かよ子さんは、すてき、
おばーちゃんというより、なんていったらいいんだろう「すてき」な女性
あこがれる人でもあり、尊敬できる人でもあり
そして、やっぱり素敵な人
「「ありがとうね」
ござます」
かよ子さんと私は同時にお礼を言った
出会ったことに、そして、こういうおつきあいが出来ることに
でも、今は、抱きしめられた腕の暖かさと
かよ子さんの柔らかな香りで胸がいっぱいになって
目頭が熱くなって何も言えない
ありがとう、ほんとに・・・出会いに
これからに・・・
はい、かけたー、かけたー♪
今年最後に湿られました、いや、その湿るちがう
たしかに、涙的にはしめってますが・・・笑
ということで、今年の更新は終わりです
この難産な話がおわったので
来年はも宇少しペースよく更新ができればいいとおもっています
誤字脱字もそろそろ見たいしね・・・遠い目
では、来年もどーぞ、よろしくお願いいたします♪