私と私の原点1
「お、おかーさん」
「私以外に誰に見えるっていうの?」
そう言って、どっこいしょとぱんぱんのスーパーのビニール袋を
玄関口に置いて、おじゃましますと上がってきた
「大家さんには、私の方からもご挨拶したけど、
心配してたわよぉ
仕事で無理してないといいけどって」
ビニール袋の1つを渡されて
部屋の中に入っていくおかーさんを追いかけた
「お礼にはちゃんと行ったよ」
私がそう言うと、冷蔵庫の前で、袋を下ろして
ばかねぇと笑った
「親切心をそんな風にいうもんじゃないよ
あんたのこと、大事に思ってくれてるんだから
有り難いわねぇ」
そう言って、冷蔵庫を開けながら、買ってきた物を片付けていく
そうそう、この雰囲気
なんか、懐かしいけど、これが日常だったよね
「うん、凄く嬉しいかった
不安な時だったし、なんか、ただ受け容れてくれる人がいるだけで
有り難かった」
篠山さんや、りっちゃんも・・・
私、ホント色んな人に大事にされてるなぁって思う
「あんた、いい顔するようになったし
一人前なこと言うようになったわねぇ」
ちょっとにやにや笑ってるおかーさん
もぉ、止めてよ、
初恋の人が出来た時と同じ顔してるよ
「やっぱり、無理矢理でも独り立ちさせてよかったわ
まぁ、有紀は料理も洗濯も掃除も
私以上に上手だから、良かったってのもあるわねぇ」
確かに、おかーさんより私の方がレパートリーもあるし
手早く作れるって自信はある
おかーさん、疲れて帰って来るから帰ってきたときには
支度済みにしてたしね~
我ながら良い主婦してたよね
「確かにね~」
そう言うと、言ってくれるわねぇなんて笑って
ちょっと小突かれた
「でも、安心したわ
何が有ったのかしらないけど、
アンタが人様に迷惑かけるぐらい駄目になっちゃってたのにね」
そう言って、私の頬を両手で挟む
ちょっとかさついてるけど、肉厚であったかい掌
想い出が一杯の手
叱るときも、褒めるときも
必ず、包み込むように私を触って言ってくれたよね
おかーさん・・・
「今、笑えてて良かったよ」
そう言われて、こくりと、頷いた
何か言おうとすると、じわりと緩んだ涙腺が
この前みたいに決壊しそうで、頷くだけにとどめた
うん、笑えるようになったよ
今も、帰れないのが辛いし寂しいし哀しいけど
それでも、笑えるようになったし
頑張れるようになった
だって、みんなが支えてくれてるもん
そう思ったら、我慢したけど、やっぱり、涙はぷくりと玉になって
私の目から転げ落ちた
「相変わらず泣き虫ねぇ」
そう言って、ごそごそと、ハンカチを出して私に押しつける
おかーさんの匂いのするハンカチ
「だって、おかーさんが泣かせるようなこと言うもん」
なんて、憎まれ口を叩きながら
でも、この懐かしい暖かさが嬉しかった
「そーかぃ?」
そう良いながら、ぽんぽんと頭を撫でてくれる
その後、私たちは、特になんの相談をするでもなく
おかーさんの持って来てくれたお菓子を食べながら
雑談をしてた
「たまには帰ってらっしゃい
お休みあるなら、お泊まりしにおいでね
ちび共も寂しがってるからね」
そう言いながら、
さーて、今日も頑張るかねぇなんて良いながら
エレベーターの方に向かって行った
ありがとう、おかーさん
私、おかーさんの娘で良かったです
予約21時
副題がかわりましたー
おかーさんでてきました
そして、今から家族が登場するよ!
まだ書いてないけどねー
また明日!