当たり前の日常15
「取りあえず、かんぱーい」
かちんっとグラスを合わせて、私とりっちゃんは
呑んでます!
「良かったよね~」
一口目で、半分ほど一気に呑んだりっちゃんは
うっとりしたような目でそう言った
「試着できたり、試し着けできるのはいいよね
それに、生の声が聞けるのも」
いい声ばっかりじゃないかもしれないけど
やっぱり、意見は聞きたいもん
「うん、お店っていいね
今まで、しばらくはネット販売とイベントとか
借りブースでいいなぁって
思ってたけど、前言撤回しちゃう
やっぱり、お店がいい!」
饒舌なりっちゃんに気圧されそうだけど
でも、私もそう思う
「ね、ユキちゃん
私卒業したら、お店作ろうかなって思うの」
えぇぇぇ~話しが早いですね
「元々、どこからに就職する気は無かったんだけど
お店するの良いかなって思うの
お店が純和風建築だから、合わないかもだけど・・・」
えぇぇぇ?お店の場所も決まってるの???
「あれ?ユキちゃんに言ってなかったかな
私、祖父から家を貰ってるの」
「き、聞いてないよー」
今聞きました、はーつーみーみー!
りっちゃん家持ちですかー、凄いなぁ
「ほら、祖母が亡くなって、数年後、祖父も亡くなって
私はこっちに、母の元に帰って来たでしょ?」
うん、だから、引っ越して来たんだよね
「その時、遺言書に、祖父と祖母の財産は
ほとんど、私に相続するって
母は、祖父母と縁切りして、家を出ていった人だから
0歳の私を両親に捨ててね」
え・・・そういう理由だったの
りっちゃん、預けられたんじゃないの?
「実はね
両親と私の仲が悪いって、高校の時は言ってたけど
実は、そうじゃないの
ごめんね、隠してて」
私は、首を振った
だって、あの時、そんな事言われても理解出来なかったと思うし
もしかすると、可哀想な子っていう顔しちゃったかも
「高校2年の時、祖父が亡くなって
一人暮らししてる私の元に弁護士さんが来て
相続の件を私に話してくれた
そしたら、次の日、私の元に母がやって来たの」
「え?何で?」
死んだときにすら来なかったんだよね
お葬式にも・・・
「全部、お金なの」
りっちゃんは、静かに、だけど、投げ捨てるようにその言葉を吐いた
「私と一緒に暮らして、お互い幸せだなって認め合えたら
1千万円、母の元に財産分与されるの
だから、母は、私を強制的に自分の元に来させて
学校に通わせたの
美大は嫌いじゃないし、むしろ嬉しいけど
一人暮らししたかった
見え透いた、嘘の愛情は私にとって針のむしろだったもの」
お金・・・か
0歳のりっちゃんを捨てたのに、今更自分の元に置くのは
子どもだから大変だからっじゃなくて、お金が理由なんだ
「だって、兄弟の中、私だけ特別扱いだよ?
弟は変に思うし、兄もあからさまに顔を歪めた
対象は、私じゃなくて、母だったがせめてもの救いだったけど
それでも、私に、あの家の居場所は無かった」
うん、そうだよね・・・・
いつまでたってもお客さん扱いの家だもん
私も、いとこが住んでるけど、隔てて扱ったことはないし
むしろ、いとこだからどうとかじゃなくて
その人がどうとか、ならあったけどね・・・
「卒業したら、結婚してお見合いとかまで言われたから
十分にしてもらいましたって、弁護士さんには言いますから
私は、独立しますって言ったの
もう、我慢するのも限界かなって思って
本当は、高校卒業の時にできたらよかったのかもだけど
その時は、そこまで考えられなかったもん」
うん、そうだと思う
最初、りっちゃんって、1人で居る子だったんだよね
中途から入って来て、
なじみもしないで、1人で、ずーっと黙っている子
暗い表情して、何しても楽しそうじゃなくて
心配で声掛けた
最初は、表面だけの付き合いだったけど
だんだんりっちゃんが心開いてくれるのが解って
私たちは、今みたいな親友になれたんだよね
今は、りっちゃんの方が先に進んでるかもしれないけど
でも、私たちは、親友
それは変わらない
「ユキちゃん、ありがとうね」
ん?何?いきなり
「あの時、ユキちゃんがずっと一緒にいてくれたから
今、私、ちゃんと自分の足で立っていられるの
お祖父ちゃんとお祖母ちゃんが居なくなって
世界の中でひとりぼっちって思ってた私に
一緒にいてくれる人がいるって思わせてくれたのは
ユキちゃんだったもん」
お酒のせいもあって、りっちゃんの目から
ぽろりと涙がこぼれた
その涙を見て、私の目も潤んできた
「だって、りっちゃんの事が気になったんだもん」
迷子の子ども、捨てられた子犬
不安で不安で堪らないって顔をした子たち
できる事は少ないかもしれないけど
せめて学校にいる間は、一緒にいて楽しい相手がいたらいいなぁ
笑った顔が見たいなって思った
誰かが傍にいるだけで、良い時ってあるから
そういう温もりなら少しでもあげられるかなって・・・
でも、あの時の自分は、そうしたいって気持ちだけで
りっちゃんの傍にいたよね
可愛いのに、暗い顔をしたりっちゃん
笑顔が見たくて、少しでも気持ちが和んで欲しくて
みんなの迎えに付き合って貰って
一緒に登校して、そんな生活だったよね
「普通なのが一番いいんだなって
ユキちゃんの家族見て、思ったんだよ
まさか、いとこの子までいるとは知らなかったし
人数多かったのは、後でびっくりしたけど
ユキちゃん、みんなと変わらない態度で私に接してきたし
ユキちゃんの家族もそうだったもん」
うん、みんな遠慮ないもん・・・
遠慮してたら、おやつなんて、他人の口にはいっちゃうもん
でも、そういう普通の態度がよかったんだよね
「あと、2年以上あるけど、考えてくれませんか?
私と、人生を一緒に歩いて下さい」
ええ?!?!りっちゃんからプロポーズですか
お店・・・一緒にしませんかってことだよね
りっちゃんの思わぬ過去が解った所で、
りっちゃんとのルート完全に立ちましたー
彼女と頑張る主人公の人生も素敵だなぁと思います、
お互い友達思いでお互いの能力を認め有ってますからね~
どんなお店になるのか、私も楽しみです、さて、
今日の夕食、当然でかけてたので、デパチカ食材&溺愛満載でした、
うなぎの握り寿司うまーでしたよ
では、また明日!