イベントの後2
「落ち着いた?」
オープンテラスの影に座った私たちに
飲み物を運んでくれた篠山さんが、座りながらそう言った
その時には私の涙は止まってたけど
今更だけど、泣いてる所を見られてちょっと恥ずかしかった
最近、ホント泣き癖ついちゃってる
また弟たちに馬鹿にされちゃうなぁ
言うこと言って、させる癖に
私ってば、結構泣き虫で、
ねぇちゃんに泣かれたら何にも言えなくてずるい
って言われた時から、泣き虫さんは卒業って
思ってたけど、甘えてるのかなぁ
それとも、感情が高ぶりやすくなってるのかなぁ
店長さんにもお礼を言って、
そんなに感動してくれなくても良いのよなんて
笑ってくれてたから、
私も笑えた、本当に素敵で、
りっちゃんとこんなお店持ちたいって思った
「今まで、イベントやネット販売で十分だなぁって
ちょっと思ってたけど
やっぱり、お店っていいね」
そうりっちゃんが言って
私と同じこと考えてたんだって、思うと嬉しかった
りっちゃんは、私よりイベント歴も、ネットショップ歴も長いし
高校の時、独り立ちできるようにするって決めてから
りっちゃんはずっと頑張ってきたもんね
「素敵だった・・・世界観ってほんとに大事だね」
私が、そう言うと、りっちゃんと篠山さんが、
こくりと頷いてくれた
「初めて入ったお店だけど、すごいね
店長さんも含め、全てが物語だったね
扉1つくぐると別世界っていうコンセプト然りだね
アリスモチーフかって聞いたら
違うっていわれて、兎の穴の中の世界
動物視点から見た世界らしいよ」
店長さんとの話しはそれだったのね
盛り上がってるなぁって思ってたけど私、それどころじゃなかったしね
「世界観は大事だよ、一応、
寛人もコンセプト的な世界観は持ってるんだ」
また寛人さん、仲良しな人なんだね
「遊べる会社が、コンセプトで
会社の機材を社員なら忙しくない時に限りだけど、
安価または、無料で貸し出ししてるんだよね
消耗品については、申告して貰ってるけどね」
へぇ、遊べる会社っていうから、アミューズメントパーク的なこと
イメージしたけど、何か作ってる会社なのかな
そういう会社って面白そう
私の会社も、工房の方で、いろんな事してて
楽しそうだけど、そんな雰囲気なのかな?
カラフルなシロップと炭酸水の爽やかな口当たりが
気持ちいい
さくさくのスコーンもいいし
クリームも、ジャムも美味しいなぁ
今回のお店は篠山さん推薦のお店
ちょっと隠れ家的な雰囲気があっていい
私たちは、テラス席にいるけど、人通りもまばらだし
落ち着くには丁度良いかも
「ね、ユキちゃん
寛人って誰か解ってないよね」
ちょっと、苦笑した顔、あれ?私も知ってる人なんですか???
「解ってないと思いますよ」
りっちゃんも、篠山さんに同意、あれ???
りっちゃんも知ってる人なの?
「篠山さんとりっちゃんの共通の知り合いなんですか?」
私がそう聞くと、二人は、噎せた
丁度スコーンを口に運んで一口食べた二人
そんなシンクロ食べしなくていいですから
そして、二人で、同じように噎せなくていいですよ
そんな仲良しいりませんから
「あははは!」
え゛ー、噎せ終わったとおもったら
篠山さん爆笑
その後、りっちゃんもくすくす笑ってる
「ほんっとに、鈍いなぁ」
え゛ーーーー心外ですよ、それ!
鈍くないとは言いませんけどそんな知らない人の名前言われても
解りませんよ
で、誰なんですか、私がそう聞こうとした時、
私たちの上に、声が降ってきた
「女とちゃらちゃら遊んでるだったら
さっさと持ってこいよな」
ばしんっと机を叩きつけて、そう怒鳴った男の人は、
私たちを、ううん、篠山さんをにらみ付けた
場の雰囲気は、一瞬にして、変わって
私とりっちゃんは、顔を見合わせて
お互い知らないと首を振った
何なの?この人・・・
私はそう思うのに、当の篠山さんは、動じるでもなく、
逆にため息をついて、ぽかりという風にその人の頭を小突いた
「今日、僕がイベントに行ったのも
それで、早く入れたのも、全部彼女たちのおかげで、
だから行けないって泣いてたお前らの為に自腹切って
買ってきたのにさ、その言い方はないだろ?
お前、周り見えなさすぎ」
苦笑混じりで、席ずれて、その席を叩きながら
篠山さんが、そう言うと、見る間にその人の気持ちがしぼんでいくのが分かった
どさりと、椅子に座れると
私たちを見て、金魚が水面でぱくぱくするように口を開け閉めして
「・・・あ・・・」
と呟いた
「あ、ありがとう・・・
それと、びっくりさせてごめん」
大きな体なのに、ちょこんと座ったその姿が可愛くて
二人してちょっと笑った
「びっくりしましたけど
気持ち解りますよ
欲しい物の前には猪突になっちゃいますよね」
そう言うと、目を見開いて、うんと頷く
でも、挙動不審だよ・・・
「こいつ、あんまり女慣れしてないんだよ
ごめんな~
仕事終わったんだったら、一緒に帰ろうぜ」
そういう篠山さんに、きらきらとした目を向けて頷いた人は
興味=篠山さんとその荷物で、私たちは早々にお開きにすることに
スコーンも、飲み物も雰囲気もよかったし
またこよっと、んー、いいお店知ってるっていいよね~
今度、いろいろ教えてもらおっと
立ち上がった、篠山さんが、思い出したように私を見た
ん?何だろう、お会計は、私たちがするから、あげませんよ
レシートを握りしめると、違う違うと笑ってこう言った
「ちなみに、寛人っていうのは
社長の名前だからね
じゃぁ、また明日ね」
え゛ーーー社長の名前って寛人っていうんですか???
に、鈍いって言われても仕方ないかも
目を白黒させてる私の頭をぽんぽんと撫でて
篠山さんは、あの男の人と一緒に帰って行った
残された私とりっちゃん
まだ席に着いたままだけと、明日の準備もあるし
そろそろ片付けモードだよね
でも、何より、「また、明日」って言葉に
ちょっと、呆然としちゃった
明日から、会社だってこと、すっかり忘れちゃってた
仕事か・・・
もうチョット休みが欲しいよー
なんて、夏休み終了間際の子どもみたいなこと
言っちゃいますよ
でも、ふぅ~なんてため息ついちゃいます
ただいまー、どしゃぶりと晴れ間とどしゃぶりという変な天気・・・あ、会社に傘わすれた、と今思い出しました、最近長めの話しですが、またいつものぐらいに戻る日は近いですヨ、話しの長さは、その話のきれる場所によるので、長短いろいろです、では、今日も楽しんで頂けると幸い!
私はごりごりするよー!