嵐の後の世界1
気がつくと、知らない場所
開けた目に飛び込んでくる光が痛い
「大丈夫?」
ひやりとするものが瞼に乗ったのは
泣きすぎて目が腫れちゃってるせい?
「すいません、ありがとうございます」
そう言葉にした途端、またぽろぽと涙がこぼれる
篠山さんの声がする・・・
だから、ここは地球
もう、みんなに会えないのかな、世界からいらないって
いわれちゃったのかなぁ・・・
「何があったの?」
ぽんぽんと幼い子にするように、優しくお腹を叩くから
つい、気が緩んじゃう
始めて生理が来たとき、痛くて痛くて死んじゃうかと思ったら
弟が、ねぇちゃんって真っ青な顔して
人呼んでくれて、隣りのおばさんが
一つ大人になった証拠だねぇ
お祝いしなきゃね、おばさんが、赤飯炊いて上げようね~
なんて、いいながら、ぽんぽんしてくれた
それをみて、弟が、ぽんぽんしてくれたり
背中さすってくれたり、手を繋いでくれたりした
「みんなに嫌われちゃったんです
私が、竜のしきたりとか、解らないから
だけど、私はおかーさんだから
みんなのこと護りたいし、怪我なんてしてほしくない
弱いのは解ってるし、私なんて一ひねりかもしれないけど
嫌だったんです・・・」
泣きながらだから、つっかえとっかえ話してる中
篠山さんが、静かに
うん・・・
そっか・・・
大変だったね
なんて、相槌打ってくれるから
なんで篠山さんにこんな事話してるんだろう
なんて、頭のどこかで考えながら
また泣いて、泣いて
子竜ちゃんたちが、どんなに可愛かったか
どうして、世界が遠くなったのか
私が人間だから駄目なのか、なんて
答えられない質問して、
わぁわぁ泣いて
だけど、篠山さんは、優しい変わらない声で
相槌を打ちながら聞いてくれた
繋いだ手の温かさと、優しい声の温もりが
どうしようもないぐらい優しくて
こんな事言っても、と解ってるのに
とりとめない話をした
「はい、飲んで」
ほんのり温かいマグカップ
微かな甘い匂いとミルクの香り
こくり、と喉に入れるとすうっと胃につたる感覚が解った
頭の中だけは、妙に冴えてるのに
その私が、気の抜けた私を見てる
「ここ、どこですか?」
私がそう聞くと
「僕の家」
さらり、と篠山さんが言う
今、寝てるのは篠山さんのベット?
人のベット占領して、迷惑かけて何やってるんだろう
「はい、飲んで」
手に持ってるマグカップを指先で弾いた
「あ、はい」
こくりと、飲むと暖かさや甘さが舌に広がった
そんな風に、ゆっくり一口ずつ飲んでいくと
やっと、周りの様子が目に入ってきた
壁一面の本棚、大きなテレビとコンポ
本棚にかけられたスーツには見覚えがある
「ごめんね、雑然としてて」
部屋を見てるのが解ったのか
篠山さんが照れたように笑う
そんなことないですよ、実家の方が雑然としてますよ
なんて、言いたいのに
首を振るしか出来ない
一杯いっぱい話したら、次は言葉が出ない
「無理に話さなくていいよ」
ぽんぽんと頭を撫でてくれる
優しいなぁ、篠山さん
優しすぎて、ちょっと辛い・・・
泣きそうになっちゃいますよ、私
じんわり浮かんできた涙を
残っていたミルクを喉に流し込む
もう、泣かないの、泣いてもしょうがないじゃない
・・・そう、思うのに
やっぱり、辛くて、辛すぎて
思い出すと、締め付けられる胸の痛みが苦しくて
ぼたぼたと泣き出してしまった
篠山さんは、ぎゅっと私を抱き締めると
何も言わず、ぽんぽんと撫でてくれた
また、私の世界は、幕を閉じた
多分帰れると思うけど、一応予約21時・・むりか?ぐらぐらしてる主人公に、ぐらぐらしてる私、状況はどっちがいい?精神的と肉体的な意味で(笑)では、また明日!