世界に起きた嵐5
「起きた」
ぼそりと呟いたのはこくたんちゃん
心配そうにはくちゃんとのぞき込んでるけど
目と耳は、まだ竜のもの
落ち着いて、と撫でようと思って手を伸ばしたけど
すっと前を向かれた
「なんで、竜同士の戦いで前に出るの?」
あやめちゃんが珍しく怒って私に言った
うん、ごめん、前もそうやって
竜同士の戦いに手を出しちゃ駄目って言われたよね
危ないからって
今回も、やけどしちゃったけど、
ブロージュさんが跡形もなく治してくれた
結果的には、良かったけど
私がしちゃったけど、怪我して欲しくないもの
「だって、あのままだったら
戦いになっちゃうでしょ?
そしたら、また昨日みたいに怪我しちゃうんだよ
そんなの見たくないよ」
私がそう言うと、
「自分が怪我するのは良いって?」
眉を寄せてるりちゃんが言う
「確かに、それはごめんなさい
でも、おかーさんとしては、見過ごせないよ
子どもが怪我するのを喜ぶおかーさんはいないもん」
弱くたって、護りたいとは思うんだよ
私が見てる前だったら、私は護るために前に立つよ
「誰が、おかーさん?」
そうぽつりとときわちゃんが呟いた言葉に私は
ショックを受けた
おかーさんじゃ・・・なかったの?
だから、前、コレとか言われたりしたの?
「おかーさんじゃないの?」
ぐらぐらとする精神を無理矢理立て直して私は聞いた
「おかーさんじゃないよ」
たんぽぽちゃんがさらりと言う
なんで?竜じゃないから?
義理だから駄目なの???みんなを育てても私は
みんなのおかーさんにはなれないの?
そう思うと、ぶわっと涙が溢れる
泣いてる場合じゃないのに涙が溢れて止まらない
私が、ここにいる理由ってそれだったのに
みんなが私を拒否した
「兎に角、これから竜同士の戦いの邪魔はしないこと」
きっぱりと、あやめちゃんが言う
「無理」
そうとしか言えない、きっとまたこうやって
治して貰うことになっても
私は、みんなを庇うと思う
護ろうとすると思う
「無理?!だって?」
べにあかちゃんが、驚いたように言う
「うん、だって、みんなが傷つくのは見たくない
おかーさんは弱くてもみんなを護るよ」
みんながおかーさんじゃないって言っても
私は、みんなのおかーさんだもん
だから、できる事はするよ
「余計な事、するのはやめてくんないかな
竜には竜のしきたりがあるんだよ」
あやめちゃんが、苛立ったようにそう言う
ずきっと、突き刺さる言葉に一瞬息が出来なくなった
余計な事、心配するのも護るのも嫌だってこと?
それに、竜のしきたり・・・またそうなるの?
「わからないよ、竜のしきたりなんて」
そう、声に出したら、止まりかけてた涙が
ぶわりと膨らんだ
だって、今まで、竜の世界だからって解らないことづくしだったけど
それなりに頑張ってきた
水の王さまや、みんなに聞いたり
ルアンさんにも相談した
私のしたいようにしたらいいよ・・・ってみんな言ってくれたけど
やっぱり駄目なんだよね
「おかーさん・・・要らないなら、
もう・・・良いじゃない」
ぼたぼたとこぼれる涙が煩わしいし
気持ち悪い
それに、つっかえてしゃべれないのが悔しい
「邪魔するなって言ってるだけだよ!」
叫ぶように、あやめちゃんが言う
何が邪魔で、何がいいかなんてわかんないよ
他の竜に触っちゃ駄目、話ししても駄目
あれもこれも駄目って言われたら
雁字搦めで動けなくなっちゃうよ
「竜のしきたりとか、ルールとか
そんなこと、わかるわけないじゃない
私は生まれも育ちも人間だし、それ以外になんて
なりたくてもなれないわよ
みんな、嫌いよ!!!」
私が、そうたたきつけるように言った途端
ぐらりと世界が揺れた
貧血?と思ったけど、どんどんみんなが遠くなる
何・・・何なの?
そう思った時、私は、地球に居た
素足に触れるアスファルトの感触
騒がしい車の音が耳に飛び込んでくる
「なんだって・・・言うのよぉ!」
21時予約です、嵐の後に待ち受けていた結果がこれだとは、という感じでしょうか、さすがの主人公も爆発、そして・・・、短気は損気というけど、これはない、と心が痛いんですよ、私も・・・では、またあしたー
あ、記念すべき『200話』でしたー




