しばらくは竜の国7
「どうした?」
ぷかりと浮かんだ泡の中に入るなり
そう言われて、ちょっと嬉しくなる
水の王さま心配してくれてるんだよね
「子竜ちゃん達が反抗期です」
って言って良いんだよね
「ん?反抗期?」
頭の上に、はてなが一杯な声
「前回、ルアンさんの授業で、私が他の竜触っちゃったし
触られちゃったんですよね
その時から、ずっと様子がおかしいなぁとは思ってはいたけど
今日の授業はついてこなくて良いって」
そう言ったとたん、やっぱり泣いちゃった
無理に明るく努めてみたけど、
やっぱり駄目
辛い、哀しい
「まったく、無理しおってからに」
そうぽつり呟く水の王さまの声色が優しくて
私の涙は、ぽろぽろと出てくる
「触ったのも、触られたのも駄目ってのは解るけど
こんなのって・・・・ない」
だだを捏ねてる自覚はある、でも、止められない感情
触られてないのに、水の動きのせいか、
柔らかに抱き締められた気がする
そう、思った瞬間、私の感情は決壊して
わんわんと子どもみたいに泣きじゃくった
もう恥ずかしいとか、そんな事より
何がなんで、どうで、哀しくて泣いてるのか
悔しくて泣いてるとか
そんな事、もう解らなくて
ただただ泣いちゃった
「こら、寝るな」
ぐらりっと揺すられて、ぼうっとしていた私は目を開けた
「あ・・・」
そっか、今水の王さまの所に居るんだった
「顔を洗うか?」
そう言って、ふよふよと揺れる空気の泡
こぽんと飛び出して、隅っこあたりに行くと
ちょっと冷たい水が気持ちいい
はぁ・・・泣いた
本当に、泣いた
一杯泣いた
そう思って恥ずかしくなったけど
息苦しいので
元に戻る
「有り難うございます」
今、言えるのはそれだけかも
「あいつらは、お前をとられまいとしておる」
ぼそりと呟きながら始まった水の王さまの解説
「お前は竜の護り人だが
ある意味竜の巫女だな
ちびたちが、お前を伴侶に望むかどうかは
今はわからぬが、現段階でとられたくはなかろう」
確かに、おかーさんとられるのは嫌だよね
別にロートリアスに恋してるわけじゃないけど
仲良くしてるのを見るのはやだよね
「あれ・・・竜の護り人と巫女は違うんですか?」
うん、ちょっと今の言い方引っかかった
「ん?説明しておらんかったか?」
はい、全然聞いてません、そして知りませんよ
「竜の護り人は、竜を育てる人のことだな
竜の巫女は、基本は湖の国の神殿から輩出される
竜の為に育ってきた女を指す
彼女たちは、お前の夢渡りのように能力を持ったものが多い
過去、現在、未来、そしてお前がいた
異世界をのぞき見ることの出来る夢見たちの住処だな」
あ、それなんか知ってるかも
湖の王さまが、私を見たのも水盤で見たって言ってたし
そういう事だよね?
「その巫女の中には、竜と番となる為育つものもおる
大抵は、育てた竜の番となるな
変態期以降年若き娘がつけられるのはそういう意味合いもあるな」
ん?変態期以降に育てるの?
ちっちゃい時じゃなく?
「変態期以降に育てるんですか?
あの可愛い時期逃しちゃうんですか?」
「お前は竜と同じかそれ以上の時で暮らして居るが
ここの者達は、普通に年をとる
竜よりずっと短いからな」
あー・・・そうだった
10年とか育ててたら、20歳でも30歳になるよね
私、今30なのかなぁ・・・
うーん
ま、いっか、うん、まだ20歳で!
「じゃぁ感覚でいうとお見合いみたいなものですか?」
だって、若い竜と若い人と結婚するなら、そうだよね?
「お見合い?」
ああ、うーん・・・
「えーと、家族とか、誰かに紹介して貰って
結婚する前に顔を合わせることです」
で、あってるよね?
うん、多分あってる
「ああ、まぁ感覚としては似ているだろうが
元々竜と番う為に存在している点では、
そのお見合いとは感覚が違うだろうな
巫女の方が断る事はまずない」
と言うことは、竜は断るの?
「ん?竜は断る事もあるな
と言うより選ぶ、数人の若い娘からな」
あー・・・何だろうこの感じ
ハーレム、じゃないよね
なんか王侯貴族って感じ
もーやだなぁー
「不服そうだな」
不服ですよ、なにその選ぶとか
なんか、すっごく嫌ですよ?
「お前は逆に選ぶ方だろうに」
今日はお泊まりでぃですー、20時予定でアップしてますー