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第8話:再現性

焼き肉のたれ実験には――――――、再現性があった。


焼き肉のたれを食べた翌日に僕は決まってうつ病の症状の増悪を認めた。


医学用語では症状が悪化することを、「増悪ぞうあく」と表現する。

できるだけ「悪化」を用いたいとは思うけど、「増悪」の方が使い慣れているのでそっちで書くかもしれない。


覚えておいて欲しい医療用語や知識についてはその都度解説してゆく。

何度か読み返して覚えていって欲しい。

大丈夫、何度も出てくるから、きっと覚えられるはず。


焼き肉のたれ実験に再現性があることが分かって、僕は高揚したことを覚えている。

理由は以下の3つになる。



①知的好奇心


なぜ焼き肉のたれで症状が増悪する?

メカニズムは?

一体僕の身体はどうなっているんだ。

純粋な知的好奇心で心は踊った。


②名声の香りがした


僕は目立ちたがりで承認欲求が強い。

何か大きな手柄を立てたのではないかと喜んだんだ。


③治療可能な可能性が高い


うつ病は脳の異常によって起こる。

脳の神経細胞そのものに可塑性かそせい(*)のない変化が生じていた場合、僕のうつ病は治らないかもしれない。


焼き肉のたれの摂取で症状が増悪し、それを避けた場合に症状が軽減するのであれば、僕のうつ病の病態には可塑性があるということだ。

「うつ病の原因となっている事象を取り除くことで、僕のうつ病は根治させることが可能なんじゃないか」と考えたんだ。


きっと治るだろうという楽観的な見立てを立てることができて安堵したのだ。


以上三点から、元よりあまり悲壮感がなかった僕はさらに楽観的となった。

この病態がどのようなメカニズムで生じているのか、そこに関心を奪われていた。


犯人(原因となっている成分)は「焼き肉のたれ」の中にいる。

しかし、その正体は一体何だろう。



みんなは何だと思う?


僕が真っ先に目を付けたのは、焼き肉のたれの主役とも言える、あの食材。



そう、ーーーー「ニンニク」だ。




(つづく)


【用語解説】

可塑性かそせい:一度生じた変化が、元の状態に戻る可能性がある状態を「可塑性」があると表現する。

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