第4話:うつ病
僕はうつ病になったのかもしれない。
そう考えるようになったのは、夏休みが終わり、新学期が始まってからだった。
秋が近づき、次第に涼しくなって過ごしやすくなっていったのに、僕の身体は未だに疲れきっていた。
ここまで倦怠感と憂鬱感が持続するのなら、これはもう単なる疲れじゃない。
「もしかしたら、うつ病かもしれない。」
それでも僕はあまり悲観的にはならなかった。
数か月すれば良くなっていくでしょ。
そんな軽いノリだった。
うつ病なんて自分には縁がないと思ってはいたけれど、一度経験できてよかったなぁ。
将来何かの役に立つかもしれないなぁ。
そんな感じだったんだ。
今思えば、なんであんなに楽観的だったんだろう。
過去のこととはいえ、自分の思考なのにあまり親近感が湧かない。
なんでだろうね。
うつ病かもしれないと思い始めてからも、僕がやることは変わらなかった。
日々の学生生活でできるだけいい成績を取れるように、授業を受けたり、勉強したり、レポートを書いたりする。
ただそれが今までに比べてひどく大変だったんだ。
なにもかもが簡単にはいかない。
そうだな、例えるなら、利き手ではない手で歯磨きをするような感覚だ。
右手を使えばなんてことはない動作でも、左手を使って行うとなると多少ハードルを感じる。
そんな感じかな。
それでもまだこの時は、うつ病かもしれないという不安より、進級できるかどうかという不安の方が大きかった。
日々進級できるかどうかについて心配していたように思う。
(つづく)