第43話:乳酸菌の第二の矢
さて、それでは乳酸菌サプリメントの作用機序についてお話ししよう。
前回お話したように、大腸粘膜上の微生物はpHを巡って熾烈な争いを繰り広げている。
乳酸菌はその名の通り、「乳酸」という酸性物質を分泌する性質を持っている。
乳酸菌が大腸粘膜上で乳酸を産生してくれれば、大腸内のpHが低下し、悪玉菌や日和見菌が減少するというのが、基本的なメカニズムだ。
さて、問題はここからだ。
上記のメカニズムには一つ「条件」が存在する。
それは、「乳酸菌が生存していること」だ。
当然、乳酸菌が生きていなければ、大腸粘膜で乳酸を放出してくれることはないからだ。
しかし、多くの研究で、乳酸菌サプリメントは死滅していても腸内環境を整える効果があるという。
この点について、よく目にする一般的な解説は下記のようなものだ。
『乳酸菌の死骸を大腸内の善玉菌が食べて、善玉菌が増殖することで、腸内環境が整う』というものだ。
僕はこの説明に対して少し懐疑的だ。
乳酸菌の死骸を餌として食べることができるのは悪玉菌でも同じではないかと思うからだ。
もし悪玉菌が善玉菌よりもより乳酸菌の死骸を餌として利用できるとしても、それはオリゴ糖などと同じメカニズムということになり、(死菌の)乳酸菌が強い整腸作用を持つ理由にはならない気がするんだ。
*オリゴ糖に関しては別の機会に解説するから、今は聞き流しておいてね。
僕の考える「死菌の乳酸菌サプリメント」が整腸作用を持つ機序は以下のようなものだ。
恐らく乳酸菌はその菌体内に、「悪玉菌を死滅させる物質」を含んでいる。
乳酸菌サプリメントにより、その物質が体内に入ることで悪玉菌が弱り、善玉菌が増殖するのだ。
つまり、善玉菌が悪玉菌を攻撃する方法は乳酸産生によるpH低下作用だけではない。
善玉菌そのものが、悪玉菌を攻撃する何らかの物質を産生している。
アオカビが細菌を殺すためにペニシリンを分泌しているのと同じように、善玉菌もまた悪玉菌を殺す何らかの物質を放出しているのではないだろうか。
これが僕の考える「死んでいる乳酸菌のサプリメント」が腸内環境を改善する機序である。
(つづく)