第3話:デバフ
正直いつ発症したのかよく分からない。
唐突に発症したようにも思うし、緩やかに具合が悪くなっていっていたようにも思う。
でも体調の変化に気付いたのは、その3年生の前期試験の最中だったことは覚えている。
勉強していても、頭に入ってこないんだ。
考えても考えても、問題の意味が、教科書の意味がよく分からない。
まるで頭に霧がかかっているようだ。
思考がかすみ、ぼんやりする。
試験勉強で、もともと無理していたんだ。
僕は疲れてるんだ。
そう思って初めは大して気に留めていなかった。
試験が終わればゆっくりと休める。
楽しい夏休みが待っている、はずだった。
試験が無事に終わり、また留年の危機を乗り切ることができた。
でも、僕の頭の中の霧は晴れなかった。
寝ても寝ても疲れている。
やたらとイライラするし、なんだかとっても憂鬱だ。
それに加えて、試験期間中からずっと下痢が続いている。
元々お腹が弱かったから、大して気に留めていなかったけど、この下痢は一体いつから続いているんだっけ。
具体的な症状は上に書いたとおりだけど、イメージとしてはあれだ。
ゲームでよくあるだろ、毒状態で少しずつHPが削られるとか、移動速度や行動速度が低下するとか、防御力が低下するとか。
いわゆるデバフってやつだ。
僕は何をするにも強いデバフがかかっているような状態だった。
お風呂に入るのすら、億劫なんだ。
だるくてめんどくさくて、なかなか入れないんだ。
ずっとベッドに横になってしまう。
横になってても何となくきつくてだるいんだ。
夏休みの初めの1-2週間、どれだけ休息を取っても、僕の体調は改善しなかった。
でもこの時はまだ、僕は事の重大さを理解していなかったんだ。
しばらくすれば元に戻るだろう。
そう思っていた。
(つづく)