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第35話:一番星
『大腸粘膜上のカンジダ菌がうつ病の原因となっているかもしれない。』
それは日本人医師の記述だった。
それまで、「カンジダ菌によるうつ病」に関する多くの記述を目にしてきた。
しかし、日本語によってそれを記述した人の中に、明確に自らを医師であると名乗る人間はいなかった。
日本人医師が語るカンジダ菌原因説の記述を目にするのは、その時が初めてだった。
さらに彼はその未知なる病態に診療を行っていた。
僕は高揚した。
僕が掴んだのは、デマじゃなかったんだ。
ちゃんと日本人の医師の中にもこの病態を認識している人がいる。
そして、どうやら、彼の手にかかればこの病気が治るらしい。
僕の冒険はここまでだ。
一介の医学生が未知なる病を発見するなんて、そんな小説みたいな話、ありやしないんだ。
もう既にちゃんと考えてくれている人がいる。
助かった。
僕は助かったんだ。
僕は彼に自らの問題を相談することにした。
(つづく)