第25話: 脳の霧
僕の脳は霞がかっていた。
ダイオフ症状として、抑うつ症状や倦怠感があるということは先述した。
それは、みんなにもイメージしやすい症状だと思う。
しかし、ココナッツオイル療法を始めてから、僕が一番苦しんでいた症状はこの2つ以外の症状だったんだ。
それは、「脳の霧 (ブレインフォグ)」と呼ばれる症状だ。
なんと説明したらいいだろうか。
具体的には、
「難しいことが考えられない」
「ちょっとした簡単なことでもすぐに忘れてしまう(記憶しておけない)」
「ケアレスミスが増える」
「ろれつが回らない」
「発言しようとしても言葉がまとまらない」
といった感じだ。
自分の自由に思考を進めることができない様子を、白い霧によって身動きが取れない状況に例えて、「脳の霧 (ブレインフォグ)」と呼ばれている。
例えるなら、お酒も飲んでいないのに酔っぱらっている、といった感じに近いだろうか。
寝ぼけているような感じと言ってもいいかもしれない。
でも、ブレインフォグがお酒や寝ぼけと明確に違うのは、「自分の状態が異常」であることをはっきりと自覚できていることだ。
「自分の頭が回らない、おかしなことをしている」ということははっきりと理解できているのだ。
僕の言動で周囲が戸惑っていること、僕が迷惑をかけてしまっていること、僕が僕の頭を思い通りに使うことができていないこと。
それをはっきりと自覚する能力だけは保たれているんだ。
もういっそのことお酒に酔っているかのように自覚までなくなってしまえばいいのに。
僕は自暴自棄にそう考えたこともある。
最大の問題は試験勉強だ。
勉強しても、集中力も続かないし、記憶もできない。
僕はただただ、教科書や問題集を眺めることしかできなかった。
(つづく)




