第22話: 森と川のように
次に、血液と細胞の関係について説明しよう。
細胞は人間にとってそれぞれが本体のようなものだ。
それぞれが独立して、酸素と栄養を必要としている。
僕らは、体内にある無数の細胞に対して、絶えず酸素と栄養を配達する必要があるのだ。
僕らはこの荷物(酸素と栄養)を血液に乗せて配達している。
肺の中に取り込んだ酸素は、肺の毛細血管から血液中に溶け込み、その血液を全身に流すことで酸素を細胞へ送る。
腸の中に取り込んだ栄養は、腸粘膜に存在する毛細血管の中に吸収され、その血液を全身に流すことで栄養を細胞へ送る。
酸素や栄養は血流に乗って、全身をぐるぐると巡る。
そのうち、どこかの毛細血管まで運ばれた酸素や栄養は、毛細血管の外に水分とともに染み出す構造になっている。
毛細血管外へ染み出した水分(組織液)は細胞の間を流れ、この組織液内の酸素や栄養を細胞が取り込むことで、無事に細胞への配達(輸送)が完了するのだ。
つまり、人間は酸素や栄養などの荷物を、「肺や腸→毛細血管→静脈→心臓→動脈→毛細血管→毛細血管の外へ出て組織液→全ての細胞」という経路で輸送している。
イメージするなら、「森の木々と川」のような関係だ。
森の木々は細胞で、川は血管のイメージだ。
森の木々は水を必要としている。
川には水が流れているけど、全ての木々が川に隣接しているわけではない。
実は川の水は地中にゆっくりと染み込んでいて、土の中をゆっくりと湿らせるように流れている。
だから、川から少し距離のある木々にも水分が行き渡るんだ。
森の木々と川の関係は、全身の細胞と血管の関係に似ている。
(つづく)