第1話:もしも幽霊が見えたなら
もしも幽霊が見えたなら、君ならどうする?
この世界には幽霊が見えると言う人がいる。
その人には見えるが、我々には見えない、しかし確かにそこにいる。
そんな存在がいるとしたらどうだろう。
幽霊がいるのかいないのか、僕には分からない。
幽霊を見たことはないし、幽霊がいる証拠を掴んだこともない。
幽霊は写真に写らないかもしれないし、物理的に触れることもできないかもしれない。
現代の科学的な方法で幽霊の存在を確認することができない以上、幽霊が存在するとは言えない。
でも、もし僕に「幽霊が見えている」としたら、どうだろう?
幽霊はいるだろうか、いないだろうか。
確かに主観的には幽霊の存在を自覚している。
しかし、それを他者に客観的に伝える手段がない。
少なくとも現代の科学では。
遠い先の将来、現代では解明されていない、エネルギー集合体を視覚化する技術が開発されるかもしれない。
その時初めて、幽霊は「見える」ようになる。
霊感のある人はこのエネルギー集合体を視覚化する能力があったのかもしれない。
まるで、超音波を感知するコウモリかのように。まるで、磁場を知る渡り鳥かのように。
しかし、そうなるまで多くの人にとっては、「幽霊は存在しないんじゃないか」という認識となる。
僕が見つけた「水銀真菌症」は、まさに、「幽霊」みたいな存在だったんだ。
(つづく)