第15話: タイムラグ
カンジダ菌が死滅した際に、毒素が大腸粘膜上にばらまかれ、この毒素によって体調が悪くなる。
インターネット上にはそのような機序が示されていた。
この機序には「ダイオフ反応」という名前が与えられていた。
僕は僕がアクセスしうる全ての医学文献の中に、「ダイオフ反応」という用語がないか確認していったが、そのような記述は確認できなかった。
しかし、僕はこの話を一蹴できなかった。
その理由は、―――――「タイムラグ」だ。
僕の体調悪化には「タイムラグ」がある。
ニンニクを食べてから、およそ10-24時間以内に体調が悪化する。
僕が食事としてニンニクを摂取した場合、そのニンニクは口から食道を通り、胃に到達する。
胃で食べたものはゆっくりと溶かされ、少しずつその先の十二指腸に送り込まれる。
十二指腸で大方の栄養素を吸収し、続いて食事内容物は小腸を通過してゆく。
そして、小腸に続くのは大腸だ。
食べたものが大腸に至るまでにかかる時間は6時間程度だと言われている。
しかし、この大腸に到達してからの歩みは遅い。
そこから10時間以上かけて食事内容物(この時点ではもはや便と表現した方が適切かもしれない)はゆっくりと大腸の奥深くへと歩みを続ける。
最終的に16時間程度経過してから、大腸の奥深くへ到達し、そこに存在するカンジダ菌にニンニクの抗菌成分が作用する。
その結果としてカンジダ菌が死滅し、毒素が放出される。
このタイムラグの謎を、ダイオフ反応という仮説は見事に説明してみせたのだ。
(つづく)