表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/16

07.刺客と将軍

 王城・西の回廊――深夜


 静まり返った廊下に、金属が擦れる音が響いた。

 月明かりの差し込む窓辺、黒装束の影が音もなく進む。

 その手には、毒を塗った短剣。

 狙いはただ一つ――王の命。


「……そこまでだ。」


 低く唸るような声が響いた瞬間、影の背後に誰かが迫った。

 

 剣を抜く音とともに、空気が張り詰める。


「王に刃を向けるとは、いい度胸だな。」


 刺客は無言のまま、ジークに向かって突進した。

 鋭い動き。訓練された殺気。

 ただの傭兵ではない。


 ジークは剣で受け止め、反撃に転じる。

 だが、刺客の刃が一閃、ジークの左腕をかすめた。


「チッ……!」


 血が滴る。だが、怯むことなくジークは踏み込み、

 一撃で刺客の武器を弾き飛ばし、逆手に取って床に叩き伏せた。


「……誰の差し金だ。」


 刺客は口を閉ざしたまま、懐から小瓶を取り出す。

 ジークが気づいたときには、すでに遅かった。


 瓶が割れ、白い煙が立ちのぼる――


「くそっ、毒か!」


 ジークはすぐに窓を蹴破り、煙を外へ逃がす。



 その隙に、刺客は自らの命を絶っていた。


 白い煙が薄れていく中、ジークはふらりとよろめき、壁に手をついた。


「……チッ、視界が……」


 毒が回っている。

 呼吸が浅くなり、意識が遠のいていく。


 そのとき――


「ジーク!」


 風を切る音とともに、廊下の奥から駆けてきたのは、メイだった。

 手には掃除用のバケツを持ったまま、目を見開いてジークに駆け寄る。


「ちょっ、しっかりしなさい!」


「メイ……? なんで……」


「廊下の空気が変だったのよ。まさか、あんたがこんな……!」


 ジークが膝をつき、ぐらりと倒れかけたその瞬間、メイが素早く支えた。

 その腕の中で、ジークの顔色はどんどん青ざめていく。


「バカ……なんで一人で……!」


 メイは震える手で、懐から小さな瓶を取り出した。

 中には、前世の知識を応用して作った解毒用の薬草ペースト。


「動かないで。これ、苦いけど我慢しなさい。」

 メイはジークの口の瓶を突っ込んだ。


 ゴホゴホゲホ


「おい、こういうときはもう少して丁寧に...?お前……泣いてるのか……?」


「泣いてない!」


 メイは顔を背けた。

 ジークを支える手が、ほんの少し震えている。


「……あんたが倒れたら、誰が王を守るのよ。

 誰が、私の仕事の邪魔をするのよ……!」


「……お前、ほんとに……」

 ジークが何かを言いかけたが、薬の苦さに顔をしかめて黙り込んだ。


「……ったく、世話が焼けるんだから。」

 メイはそっとジークの額に手を当て、熱を確かめる。

 その表情は、どこか不安げで、でもどこまでも優しかった。


「……もう少しで、間に合わなかったら……」


 その声は、かすかに震えていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ