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06.秘密会議

王の執務室――


 夜の帳が下り、静寂が城を包む中、重厚な扉の奥では小さな会議が開かれていた。

 出席者は王、王の実姉セリナ王女、そしてその親友であり元・黒鴉のエース、ナナ姉。

 他の高官たちは席を外され、ここにいるのは王家の中枢に深く関わる者たちだけだった。


「……で、原因は?」

 王が机に肘をつきながら、疲れた声で尋ねる。


「刺客の侵入経路を洗っていたら、文官室の記録がごっそり消えているのが見つかりました。

 三百七十枚の羊皮紙が真っ白。うち百二十件は再作成不能。

 外交記録、軍備計画、予算案、あと……昼食当番表も。」


「昼食当番表はどうでもいいだろう。」


「いいえ、あれがないと誰が皿洗いするかで揉めるのよ。」


 セリナ王女がため息をついた。

「……で、記録が消えた原因は?」


「メイです。」

 ナナ姉が即答した。


「またか……」

 王はこめかみを押さえた。


「漂白魔法を使えるのは、あの子だけ。前世の知識を応用して、独自に編み出した魔法。

 便利すぎて、本人も手放せなくなってるのよ。」


「でも、よりによって刺客の侵入直後に使うか? しかも、書類が山積みの状態で。」


「“掃除が面倒だったから”だそうよ。」


「……真面目すぎるのも考えものね。」

 セリナが苦笑する。


「昔からそうだったわ。几帳面で、几帳面すぎて、逆に大惨事を起こすタイプ。」


「まったく……姉上の娘は、どうしてああも極端なんだ。」


「それを言うなら、あなたも大概よ?」

 王はぐぬぬと唸った。


「で、ナナ。君はどうするつもりだ?」


「しばらくは、あの子の行動を私が見張るわ。

 それと、文官室の子たちにも、さりげなくフォローを入れておく。

 イチとニー、あの子たちがいれば、空気も和らぐしね。」


「……あの二人、君の好みだったな。」


「ちょ、ちょっとセリナ!?」

 ナナ姉が慌てて振り向くと、セリナはにやりと笑っていた。


「そういえば昔から言ってたわね。“あの子たち、大きくなったら絶対いい男になる”って。」


「そ、それは……! あの頃はまだ子どもだったし、ただの可愛い弟分で……!」

ナナ姉はさらに慌てて言い訳を並べた。


「ふぅん? でも今は?」


「……今は、ちょっと目の保養に……なってるかも?」


「やれやれ……」

 王は紅茶を一口すすり、ため息をついた。


「とにかく、メイには“執務室での使用禁止”を厳命してくれ。

 あの子には私が何を言っても、聞き流されるからな。ぜひ、君から頼んでくれ。」


「了解。私が言えば、素直に聞くわ。たぶん。」


「“たぶん”か……」

 王はまた深くため息をついた。


「この国の最大の脅威は、外敵でも反乱でもない。

 漂白魔法と、メイの掃除嫌いだな……」


「それに振り回される王と、振り回される文官たちもね。」

 セリナがくすくすと笑った。


 ナナ姉は立ち上がり、軽く一礼する。

「じゃあ、私は文官室に戻るわ。あの子たち、まだ気づいてないみたいだし。」


「何に?」


「ふふ、内緒。」


 ナナ姉はくるりと踵を返し、夜の廊下へと消えていった。

 その背中には、かつて“黒鴉”と呼ばれた者の気配と、どこか甘やかな余韻が漂っていた。

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