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15.最強なのは天然兄弟

 王城・中庭――午後の陽だまり


 ジークとメイは、花壇のそばのベンチに並んで座っていた。

 春の風がやさしく吹き、ふたりの距離はほんの少しずつ近づいている。


 その背後――中庭に面した廊下を、イチとニーがのんびり歩いていた。


「……でさ、またやられたんだよ。

 今朝の報告書、全部真っ白。」


「えー、また? それ、メイちゃんの漂白魔法?」


「うん。たぶん、くしゃみした拍子に暴発したっぽい。

 ジーク殿がいなかったから、誰も止められなかったんだよね。」


「やっぱりジーク殿がいないとダメなんだなぁ。

 あのふたり、相性いいよね。」


「うん。ていうか、ジーク殿、絶対メイちゃんのこと好きでしょ。」


「だよね。あの目線、完全に“守りたいこの笑顔”って感じだったもん。」


「うんうん。あれはもう、恋だよ恋。」


「……あ、でも本人たちには内緒ね?」


「もちろん。気づいてないふりが一番効くから。」


 ふたりはそのまま、何も気づかずに廊下の奥へと歩き去っていった。


 中庭のベンチでは、ジークとメイが固まっていた。


「……聞こえてた?」


「……ばっちり。」


「……俺、そんな目してた?」


「……うん。でも、ちょっと嬉しかった。」


 ふたりは、そっと目を合わせて微笑んだ。


 ---


 ### * * *

 中庭の反対側・回廊の陰


「……あれ、聞こえてるよね?」


 ナナ姉が、ひょいと柱の陰から顔を出す。


「……完全に聞こえてますね……!」


 アインが顔を青ざめさせていた。


「イチとニー、あれ絶対気づいてないよね?」


「ええ、あの感じは確信犯じゃなくて、

 ただの“素でやらかしてる”やつです……!」


「……あの子たち、天然すぎて逆に最強ね。」


「まずい……! ジーク殿とメイ様に、あんな直球な会話が……!」


 アインが慌てて飛び出そうとするのを、ナナ姉がひょいと袖をつかんで止めた。


「もう遅いわよ。

 ほら、あのふたり――手、つないでる。」


「……っ!」


 アインがそっと覗くと、

 ジークとメイが、照れくさそうに手を重ねていた。


「……ああ……」


 アインはその場にへたり込み、天を仰いだ。


「……また弟たちが、知らぬ間に一歩進んでしまった……」


 ナナ姉はにっこり笑って、アインの肩をぽんぽんと叩いた。


「ふふ、でもよかったじゃない。

 “愛”って、時に天然の風に乗って届くものなのよ。」


「……風、強すぎます……」


 ### * * *

 王城・執務室の窓辺――その夜


「……奇跡だな。」


 王が窓の外を見ながらつぶやいた。


「イチとニーの天然が、ここまで役に立つとは。」


「ふふ、あの子たち、やるときはやるのよ。」


 王妃が微笑む。


「……で、ナナの重婚は?」


「却下だ。」


「即答ね。」


「当然だ。」


 王は深く息を吐き、空を見上げた。

「……まあ、これで少しは静かになるか。」


「そうね。

 でも、“家族”って、そう簡単に静かにはならないものよ?」


「……それもそうだな。」

 王は、どこか嬉しそうに笑った。


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