14.影の実力者
王城・執務室――その直後
王が机に突っ伏していたそのとき、
再び扉がノックもなく、静かに開いた。
「……陛下。」
その声に、室内の全員がピタリと動きを止めた。
「……お、お妃さま……!」
ジークが背筋を伸ばし、ナナ姉がそっと作戦ボードを背中に隠す。
王は顔を上げ、気まずそうに咳払いした。
「……おお、来てくれたのか。」
王妃は静かに歩み寄り、王の前に立つ。
「陛下。
“娘を落とせ”という命令を、騎士に出したと聞きましたが?」
「……いや、それは……国益を考えて……」
「“国益”と“親心”を混ぜるのは、やめてください。」
「……ぐっ。」
王妃は優雅に微笑んだ。
「それに、ナナさんを巻き込んで“くっつけよう作戦”?
アインが“貞操の危機”と叫ぶのも、無理はありませんね。」
「……アイン、余計なことを……」
「事実です。」
アインは即答した。
ナナ姉は肩をすくめながら言った。
「でも、うまくいけばメイちゃんも幸せになれるし、
私の重婚も――」
「ナナさん。」
王妃の声が一段低くなる。
「はいっ!」
「あなたの“恋の応援力”は認めますが、
今回は一歩引いて、見守るという選択肢も覚えてください。」
「……はい。」
王妃はジークに向き直る。
「ジーク。あなたは、どうしたいの?」
ジークは一瞬戸惑ったが、やがて静かに答えた。
「……俺は、メイのことを大切に思っています。
でも、それを“命令”で進めるのは違うと思いました。」
王妃は優しく微笑んだ。
「その気持ちがあれば、十分です。
あとは、自然に任せましょう。」
王は小さくため息をついた。
「……やっぱり、君には敵わんな。」
「最初からそうしていれば、混乱は起きませんでしたね?」
「……はい。」
王妃はふっと笑い、王の肩に手を置いた。
「さ、今夜は家族で静かに食事でもしましょう。
“恋の進展”は、若者たちに任せて。」
「……うむ。」
アインは心底ほっとした顔で、深く頭を下げた。
ナナ姉は未練たっぷりに作戦ボードを畳みながら、
「でも、偶然の手つなぎだけは……」とつぶやいていた。




