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10.最強の影


 王都・北の外れ、廃城跡――深夜


 月明かりに照らされた古びた石造りの城。

 その地下には、かつての王家の血を引く者が、密かに牙を研いでいた。


「……ここが奴の根城か。」


 ナナ姉は黒い外套を翻し、廃城の屋根に静かに降り立った。

 その隣に立つのは、漆黒の装束に身を包んだ男――アイン。

 王家直属の影部隊《影鴉》の現リーダーであり、ナナ姉のかつての部下。


「まさか、またあなたと並んで任務に就く日が来るとは。」


「ふふ、懐かしいでしょ?」


「……正直、緊張してます。あなたの“本気”を見るのは、久しぶりですから。」


 ナナ姉は微笑んだまま、手にした短剣を月光にかざした。

「じゃあ、思い出させてあげる。」


 その瞬間、二人の気配が完全に消えた。



 地下は、すでに静寂に包まれていた。

 血の匂いが漂い、倒れ伏した刺客たちの姿が床に散らばっている。


「……これで全員か。」

 アインが剣を納め、周囲を見渡す。


「ええ。残っているのは、あなただけよ。」

 ナナ姉は、王の異母兄を見下ろしていた。


 彼は膝をつき、肩で息をしながらも、まだ目に狂気を宿していた。

「……貴様ら、弟の犬どもめ……!」


「犬で結構。でも、王のために牙を剥くのが私たちの役目よ。」

 ナナ姉は静かに短剣を収めた。


「アイン、拘束を。」


「了解。」

 アインが無言で縄を取り出し、王子の両手を縛り上げる。

 その手際は冷静で、無駄がなかった。


「……殺さないのか。」


「命令だから。あなたは“裁かれる”の。」

 ナナ姉はそう言い残し、踵を返した。




* * *

 王城・謁見の間――翌朝


 王は玉座に座り、報告を待っていた。

 扉が静かに開き、ナナ姉とアインが現れる。


「……終わったか。」


「ええ。王子は生け捕りに。

 他の者たちは、全員排除済み。

 抵抗の有無にかかわらず、全員が武装していたため、処理しました。」


「……そうか。」

 王は目を閉じ、静かに頷いた。


「君たちにしかできない任務だった。ありがとう。」


「ふふ、褒められると照れるわね。」


 アインは静かに一礼し、王の前に進み出る。

「陛下、私事ながら、弟たちには今回の件を伏せていただけると助かります。」


「もちろんだ。イチとニーには、何も知らせない。

 彼らはこの国の“光”の側にいるべきだ。」


「感謝します。」


 ナナ姉がふと、いたずらっぽく笑った。

「……じゃあ、ついでに私からも一つ、お願いがあるのだけど。」


「ん? なんだ?」


「イチとニーとの、重婚を許可してもらえないかしら。」


「……は?」

 王の目が点になる。


「えっ……?」

 アインが一歩前に出た。


「な、ナナ様!? それは、どういう――」


「だって、どっちかなんて選べないもの。

 イチは真面目で可愛いし、ニーはちょっと抜けてるけど優しいし……

 二人とも、私の癒しなのよ?」


「ま、待ってください! 弟たちは一般文官です! 影の任務にも関わっていませんし、

 そもそも、まだ何も知らないはずで――!」


「だからこそ、今のうちに許可を取っておこうと思って♪」


「や、やめてください! お願いですから、彼らの平穏な日常を奪わないでください!」

 アインが珍しく取り乱し、王の前で必死に頭を下げる。



「……ふふ、アインがこんなに慌てるなんて、珍しいわね。」


「ナナ様、お願いですから冗談だと言ってください……!」



 王はしばらく沈黙していたが、やがて肩を震わせ――

「……ぷっ、ははははっ!」


「陛下!?」


「いや、すまん、あまりにアインが真面目に慌てるから……!

 ナナ、君、わざとだろう?」


「ふふ、バレた?」

 ナナ姉はくすくすと笑いながら、アインの肩を軽く叩いた。

「でも、冗談半分、本気半分よ?」


「……やめてください……」

 アインは顔を覆い、深いため息をついた。


 王は笑いながらも、ふと真顔に戻る。

「……でも、君たちのような者がいてくれることが、

 この国の支えになっているのは確かだ。」


 ナナ姉とアインは、静かに頭を下げた。



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