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金の巨漢

「ひゃぁぁぁぁあっぁあぁ!?追いかけてきてますよ!?何してるんですかルアさん!」

「し、仕方ないですよ!私だってあんなに碧空鏖殺光線が減衰しないなんて思ってもなかったんです!クリフォト...ああいや、ダンジョン内では80mで最大威力、130mで半減して160mでは「模倣生命:人間」にすら傷一つつかなかったんですし、この世界でもそうかなって思ってたんですよ!」

「...ルカ!」

「わひゃぁっ!?」

議長の一言でルカは捕獲され、それと同時にフブキが突撃銃(アサルトライフル)と思しき銃をルカに渡す。

「装填してるのは「強制獣化解除」、「強制睡眠」の二つだよ!あんだけ上位存在なら...殺したあとに食える肉はうめえんだろうなぁ...!」

最後の方では戦闘狂状態が戻ってきたことに少しだけ残念がりながらも、ルカは議長によって揺れをほぼ感じなくなっている体で銃を受け取る。横からゼロが自前の翅で飛んでいるのが羨ましかったが、別に飛びながら射撃したいわけではないので翼の入手を諦めることにした。

「いけぇぇぇぇっぇぇぇぇぇ!」

飛び出した弾丸...いや、極小の注射針は後ろから追ってきていた東洋風の龍を寸分違いなく突き刺し。ドスンと、大きな音を立てて倒れ伏したのだった。


復活するのではという少しの恐怖でおっかなびっくりながらも龍に近づいていったルカとそれをいまだに担いでいる議長は、竜が倒れ伏した場所からやや離れたところに金髪の巨漢がいるのを見つけた。顔は見えないが、気温が15度程度の秋にもかかわらず少し厚着に見える服を着ているということは代謝が低い、もしくは身体能力が衰えてきた老人なのだろう。たとえそれの正体が龍だとしても、そこら辺は変わらないらしい。...もしくは、そうして人の世に溶け込んでいるのだろうか。

金髪の巨漢をつっついて見たルカは、それでも動かないところを見てしっかり寝ていることを確認する。彼を自らもつついてみた議長は、結構強めに指をぐりぐりと肉が落ちてゆるくなっている頬を押し込むがまたしても反応しないのを見ると、「...うむ。動かないのであれば仕方ない」とこぼし、ルカを地面に立たせると後ろを向き、「では、私はフブキを呼んでくる。フブキが見えたならそこの鞄にある丸薬を呑み込ませてその巨漢を覚醒させてくれ。では、いってくる!」と少し土が爆ぜた気もするほどの強い脚力で地面を蹴ると、元来た方だと思われる方向へ走っていった。

倒れ伏した老人と一人取り残されたルカは、「...ちょっと暑いな」と着込んでいたアウターを三枚脱いだ。


「...ぅぬ?」

巨漢が目を覚ましたのは、いまだフブキも議長も見えぬ時間でのことだった。今も強力な睡眠効果が体内に残留しているのだろう、少し苦しそうに顔を歪めた後頭を大きく振った。それでも少し苦しそうにしている老爺の顔を見ていると、ルカに少しだけ罪悪感が芽生えた。

しかし老人はルカを目に入れると一瞬で警戒態勢に入り...そして、そのまま顔を優しく綻ばせた。老爺はルカの頭に手をのせ、「君は儂を見ていたのかな?物好きなのもいたものだが...」とルカを撫でながら柔らかな笑みを浮かべていた。一方、ルカは今まで同性に撫でられたことなどないので(というかそもそも身近な同性がいなかった)頭に乗せられた少し固い凹凸が出来ている手を感じて少し疑問に思っていた。ただ、ルカと一緒にフブキの配信を見ている【同志】の澪や少し厳しいものの澪にデレデレな明という親に撫でられたことなど生まれてこのかた数回しかない彼はなんとなく嬉しい気がして目を細めていた。それは祖父に撫でられる孫の様な見た目なのではあるのだが、それを見ているのはいない。しいて言えばこれを書いている作者自身の脳内に妄想として描き出されているぐらいだろうか?


「ルカ、待っていたか?...と、目が覚めていたか。先程は我が方のルアが怪光線を直撃させてしまい申し訳ない。...ほら、ルアも謝れ」

「...サーセン。チッ、なんで私が謝んなきゃなんねえんだよ」

明らかに拗ねた様子のルアが、老爺の目も見ずに舌打ちしながら形だけ謝罪した。まあそもそもまっすぐに見ているだけでは明らかに2Ⅿを越す巨漢である老爺―――ローゲインの視線と合う事は無いのだが。

ただしローゲインは、「いや、儂が龍の姿で寝てたのが悪いんじゃしのぅ。謝られる事でもないし、寧ろ起こしてくれてありがたいもんじゃよ。ああそうだ、儂らの村に住むかの?外にある町には負けるが、割と栄えているとは自負するぞい?」と回答し、それについていくようにして彼が紹介した村へ暫くの一行の滞在が決定したのだった。

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