彗星のごとく現れた異世界人たち
「~!」
こぶしを効かせて歌うのは、2000年発表の池上の隕石。実際にある原曲と名前を変えてお送りしています。
現在それを熱唱しているのは白銀の長い髪を持ち、素顔を晒すことがありつつもそれがずっとロリである蒼月澪に比べれば大きいが小ぶりと言わざるを得ない胸。真っ直ぐに立てば160程度はあるだろう背丈の少女。現在歌枠配信中の議会6期生兼0期生、銀嶺フブキである。しかし彼女は、移動しながら配信を行っていた。移動しているのは、彼女たち数人が乗り込んでいる黒いリムジン。そう、先に書かれているプロローグにて瑠依少年を多量出血によって死に至らしめることとなるリムジンである。
黒いリムジンは結構大きく、大型自動車免許がいるほどのサイズで元々は十二人乗りのリムジンカーなのだが配信ができるように改造された結果、完全防音で正面のフロントガラス以外外は見えず、凹凸でもほとんど揺れなくインターネット回線もしっかり繋がる魔改造配信設備と化していた。定員6名になってしまっているその車体には、年末で蒼月澪及び蒼月明とオフコラボの予定を持った<幻想議会>のメンバーが載っていた。搭乗者は、1期生から議長こと大恋マキ。二期生から永久ゼロ。3期生から常夜ユキ。5期生から堕闇ルア、6期生兼0期生として原罪こと銀嶺フブキがある。
運転席に座るのは蒼い髪にやや銀髪が混ざった非常に長い長髪を持つ少女で、その背丈は140㎝を割る小ささ。少し眠そうな顔をしているのは永久ゼロの中身である天音ゼロである。見た目からすれば子供が運転していると取られるかもしれないのだが、彼女の年齢は一応26歳である。ただ彼女の身体が人ならざる者によって創られているので、今の彼女を創った者と同じような見た目に創りかえられている。また、身体の成長もないので実質不老な状態となっている...のだが、先述の通り絶壁は成長せず140㎝を割る背丈もどうにもならないと言う事だ。その為、運転技術が非常に高い彼女が運転してもたまに警察に停められてしまうが、他の人物はまともに運転できるのがルアぐらい、しかも彼女の運転できるものは普通の自動車なのでリムジンカー仕様のこの車ではゼロを使うしか無かったりする。
そして、そんなゼロの目代わりになることもあるのが現在助手席に座っている堕闇ルアの中身、ルアである。
元々彼女のベースであるフブキ自体フブキと言う名前しかないので、ルアという彼女の名前もフブキから分裂した際彼女が自らをルアと呼んだからなのだ。そもそもフブキとルアには戸籍が無いのだが...そこらへんは恐らく議長...貴子が何とかしているのだろう。
しかしそんな彼女の目でも吹雪いているこの天気で銀髪の、しかもアウターすら白い姿をとらえることは出来ない。何か違和感がする、そんな感じで動けない状態になっている瑠依少年がいる坂に進み...
ドン、とファーストインパクト。次いで、どういう訳かリムジンカーの電波が消失。何とか配信を切ったフブキは、そのまま周りの4人と昏倒し...そして、青い血に浸された黒いリムジンのタイヤが、淡く輝いた。
***** ***** ***** ☆彡
「...っぐぅ...!?」
倒れ伏した瑠依少年は、上に落ちてきた重みに小さく呻く。そしてそれが4回続いて、止まった。
恐らく落ちてきた二人目の人間の肘が腹に刺さったので呻いたわけだが、更にその上に肘が刺さっていったので彼の腹の中は少し傷がついただろう。腹筋も恐らくはボロボロな筈だ。
ぐりぐりと、更に肘が刺さりそうなので何とか脱出しようと試みるも、恐らく数百キログラムはあるだろう5人の重石は彼を地面に押しとどめ、肘が刺さり切った瑠依少年は一瞬意識を失った。が、肘がまたねじ込まれて意識を復活させるともがくように暴れた。それに気づいたか上にいる人物がもがき(その動作でまたもや瑠依少年に肘がねじ込まれたが)、連鎖する様に動いて一番上の人物まで伝わったのか少しづつ重みが少なくなっていき、そして最後に瑠依少年に肘をねじ込んでいた人物も瑠依少年をばねにするようにして離れ...その動作で再び腹に大きなダメージを受けて、今にも倒れそうな幽鬼の如くふらふらと瑠依少年は立ち上がった。
「あ、ごめん!大丈夫だった!?」
腹を痛そうにさする瑠依少年に謝ったのは、瑠依少年と同じくらいの背丈の、青い髪に銀の髪が混ざり背中に人ならざるもの...神の出来損ないである天使が持つ純白の羽を生やした絶壁碧眼の少女。ホロライブ4期生の握力50kgの人の髪色を反転させたような見た目の少女で、身長は140を割る。もちろん瑠衣少年は、彼女のことを永久ゼロだと気づいている。ゼロには羽はないが、瑠依少年がそうだと確信している理由は後述。
上に乗っていた2人目はルアだった。ルアは配信の姿そのままで、黒髪ロングに狼の耳と紅い目でそこそこの胸。ベースは一期生兼ゲーマーズの方のほうです。ベースの方では非常に尖っているイメージなのだが(というかルアの配信でも尖り目なのだが)、ルアは恥ずかしそうに頭を掻くと「...悪かったな」と言ってそっぽを向いた。しかし瑠依少年はツンデレを理解しておらず、なぜそっぽをむかれているのか、と少しだけ悩んでしまった。
三人目は議長で、しっかりと謝ったあとあたりを見回して「...ダンジョン!?」とこの中にいる人物では殆どの人がわからないであろう反応を見せた。もちろん、ダンジョンが滅んだ後に創り出された瑠依少年も理解できるはずはなく。頭を捻っていると、後ろから少しある膨らみが押しつけられた。
「いやぁ、すまんねぇ。僕、可愛いのにはとりあえず粉かけとく悪い女でさ?すっかり陥ちているゼロが嫉妬したような目で君を見つめるのはどうかな?」
「し、嫉妬なんかしてないわいっ!ただ、y...じゃなくて、ユキのことが心配で...」
白い髪に龍の角をつけた、2期生の鬼がベースの少女は真っ赤になって否定するゼロに笑いかけながらも胸を瑠依少年の頭にぐりぐりし、撫でまくっていた。そのうちユキ...さっきゼロが余さんと口走りかけた少女の元にゼロが来て、頭をユキの脇腹にぐりぐりして甘えるとユキはゼロを撫でたりし始めた。最近自らの配信がない時にはカップリングが発生しているのを見て「おほー」などと言っては「こらっ、おほーとかそういう言葉を自分の子供の前で言って恥ずかしくないのかいっ!?」とその時は少しだけ鬼嫁感のある明に叱られる放蕩人間と化した澪がいれば確実に「おほー」もしくは「ユキゼロてぇてぇ」と言いかねない甘い雰囲気に、いけないものを見たように顔を赤くした見た目小5ぐらいの6歳児は「やぁ、初めまして!」と人懐こく笑いかけてきた、自らの背後にいたその存在に驚くことになった。
背丈は160頃、胸はあまりない。白銀のロングで、頭には見た目だけで実際には機能が無いかもしれない猫耳がついていて背中には明らかに人ではないと即座に分かる、かつて澪が保持していた辿嶺翼というスキルで作られるような一枚数千の刃鱗で構成される4対の黒翼が生えていた。その背中の黒い翼は禍々しくとも、瑠依少年はどこか神々しいように感じた。実際、神々しいどころか神そのものなのだが彼はそれを知らない。
「...銀嶺フブキ様でしょうか?」
「うん、そうだよ?君の親には昔お世話になってさ、それでみんなでオフコラボしようって話になって、そこにいるちみっこいゼロが君を轢いちゃったみたいで」
「ちみっこい言うな!ボクをこうしたのは澪様だって、フブキもその場にいたよね!?」
「ボクニハリカイデキナイハナシダナー」
「...ドラゲリオン・エミリア・キュルヴィース・クエリアエンデ・エヴォレディアス・ジ・アトミカルレイジ・ファントムペイン・スピアヘッド37世さん?本当のことを言わない君には折檻...じゃ可哀想だから、一旦天国を見てもらおうか。だいじょうぶ、銀髪の神様が呆れた顔で見てくるだけだから」
嘗ての彼女の本名を呼んでは恐らく天国と称した地獄へ誘おうとするゼロに抵抗する様に逃げ惑うユキと見た事もない瑠依少年を可愛がって頬をつんつんしているフブキ、そしてそれを見て少しだけ瑠依少年に恨めしそうな顔をするルア。その5人に囲まれて、恐らく一番まともな大恋マキ議長はフブキを瑠依少年から引きはがした。
推しに頬をつんつんされると言う一種のご褒美を奪われた瑠依少年が恨めしそうに議長を睨みつけたが、当の本人は瑠依少年をまっすぐ見つめていた。仕方なく瑠依少年が「...なんですか?」と不満げに聞くと、彼女は一言
「議員入りしたのなら、どのような名前が欲しい?」
そう尋ねた。




