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第一章:4

 ミーティングの翌日は土曜で、学校の授業は半日で終わりだった。早速ぼく達はぼくの家に集まり、わいわいと作業を始めた。

 人数が多いので、効率を考えて機体はそれぞれ手分けをして製作することになった。元々、いくら大きなガレージとはいえ機体を全て組み立てた状態で格納する事は不可能だったので、右翼、左翼と、コックピット、そして胴体を分割できるように考えていたのだ。

 ラジコン飛行機の製作経験があるぼくと瀬川が左右の主翼を、機械をいじるのが好きな藤原が駆動部分と尾翼、胴体の製作をそれぞれ担当した。

 ぼくは、ただ大きなラジコンを作る程度に考えていたが、実際の工作は、ぼくの想像よりよっぽど困難だった。軽量化のために、リブには硬質の発泡スチロールを、桁にはカーボンパイプを採用したのだが、今までカッターナイフで簡単に工作できるバルサ材を多用していた身に発泡スチロールはとてももろく、しかも厚さも全然違うので、いつも通りの工作という訳には行かなかった。

 まず瀬川と二人で、改めて翼形について協議し、決定した図面を元に、オリジナルのリブをまず一つ作った。今度はそれを、二人で手分けをして、複製を大量に作った。平面形は単純な、長方形をした矩形翼を採用したので、同じ形、同じ大きさのリブを作ればよかった。それでも、全く同じものを大量に手作業で作るのは骨が折れた。かなり厚手の板を使用しているため、カッターナイフは使えない。そこでぼく達は使い慣れない糸鋸と格闘していたのだが、なにせ、いくら硬いとはいえ、発泡スチロールである。力の入れ方を少し間違えると、すぐに形が崩れて使い物にならなくなってしまう。リブは翼断面系を決定する重要な部品だ。適当な工作をするわけにはいかなかった。

 必要個数揃ったリブを、お互いに検品し合い、工作精度を確かめると、結局半分くらいは検査を通らなかった。

「お前、こんなガタガタじゃ翼が歪んじゃうだろ」

「お前のだって、カーボンパイプ通す穴の径、全然違うじゃないか」

 文句を言いつつも、お互いの部品は、実はかなり設計図に忠実で、お互いの検品の要求精度が高すぎるくらいだったのだ。仮に落選した部品を利用して飛行機を作ったとして、きっと飛行に差し支えは無かったろう。ただ、絶対に飛ぶものを作りたい、という妥協しない気持ちが、お互いを厳しい目にしたのだ。渋々、お互いにやり直しとなったリブの製作に取り掛かった。

 そしてどうやら、苦戦していたのはぼく達だけではないようだった。実は、駆動部分はまだ、材料の調達段階なのだ。

 できるだけ製造コストを低く抑えたい、という全員の意向で、ベースとなる自転車は中古車を用いる事となっていた。そして製作担当の藤原が、直々に自転車の調達に向かっていたのだ。「川原を歩いていれば、放置自転車の一台はすぐだ」とは藤原の弁だ。ぼくの家から川原はすぐ近くだし、不法投棄されたゴミが山積しているので、僕自身もすぐに見つけて戻ると思っていた。

 しかし、彼が出発してからかれこれ三時間近くになる。まだまだ暑さで倒れるほどの季節ではないが、若干の心配をし始めてきた。

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