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雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました  作者: 小花はな
第一章 はじまりの契約と妖狐の秘密

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7話 雪女と妖狐と波乱の生徒会



 お昼を九条くんと食べた後、午後の授業も終わり、とうとう放課後がやってきた。



「うわぁぁああーっ!! 本当に、ほんっっとうに来てくれたんですね!! 九条くぅぅーんっっ!!!」


「はい、今日から参加させて頂きます。今まで参加出来ず申し訳ありませんでした、木綿(ゆう)先生。……みんなも本当にごめん」



 生徒会室に入って早々、私の隣に立つ九条くんの姿を見た先生が、感激のあまりおいおいと泣き出した。

 それに九条くんは苦笑しながらも私たち生徒会メンバーを振り返り、申し訳なそうな顔をする。


 今年の生徒会が発足して早2ヵ月。ようやく生徒会メンバーが全員揃った。先生のオーバーリアクションはともかく、奔走した当事者としては感慨深い限りだ。



「さて先生、どうします? とりあえず九条くんは初回ですし、改めてお互い自己紹介しておきましょうか?」


「おおっ! 雪守さん、ナイス提案です! 既に見知った顔同士でしょうが、こういうのは最初が肝心ですからね!」



 私の提案に先生が目を輝かせ、改めて一人一人自己紹介が始まる。

 ……という訳で、ここいらで生徒会メンバーについておさらいしておこう。



九条神琴(くじょうみこと)。よろしく」



 まずは生徒会長。学年1位であり、三大名門貴族のひとつ、妖狐一族の次期当主だ。



雪守(ゆきもり)まふゆです。よろしくお願いします」



 そして副会長は私、学年2位。九条くん以外には絶対に秘密だが、雪女の半妖である。



雨美水輝(あまみみずき)だよ。みんな改めてよろしくね」



 次に書記、学年3位。(みずち)一族で貴族だ。



夜鳥雷護(やとりらいご)だ。よろしく頼むぜ」



 最後に会計、学年4位。(ぬえ)一族でこちらも貴族。



「はいはいはいっ! 僕は木綿(ゆう)疾風(はやて)です! 先生だけど、みんなのことは仲間だと思っているので、遠慮せず仲良くしてくださいっ!!」



 ……あとおまけで生徒会顧問の木綿(ゆう)先生。木綿と書いて〝ゆう〟と読む。でもあだ名はもめん先生。

 茶髪のロン毛で何かと言動がうるさいのが特徴だ。担当教科は国語で、その本性は一反木綿(いったんもめん)である。ちなみに貴族ではない。


 この面子(めんつ)を見ても分かる通り、人間はいない。元々人間よりも妖怪の方が能力的に優れている者が多いので、成績によって生徒会役員が決まるうちの高校だと、どうしてもメンバーは妖怪に偏りがちになるのである。

 なので私の生徒会入りが決まった際には、周囲から〝人間の星〟などと持てはやされてしまい、でも実際は雪女の半妖であることなど言える筈もなく、なんとも心苦しい思いをしたものであった……。



「じゃあ自己紹介も終わったし、そろそろ本題に入ろうか。副会長、今日の議題は?」


「あ、はい」



 考え事をしている間にみんな席に着いたようだ。九条くんに話を振られ、全員が私を見る。それに私も副会長モードに気持ちを入れ替えて、事前に作ってきた資料を全員に渡した。



「今日の議題は文化祭についてです。各クラスの出し物は決まりましたが、資料の通り、ポスターやパンフレットの作成。それに当日使用する器材の発注や外部交渉が進んでいない状況です」


「ふぅーん……。これをここに居るメンバーだけでこなすの? 文化祭まで日が無いのに、さすがにしんどくない?」



 ペラリと資料を捲って呟く九条くんに、私は同意するように頷いた。



「はい、正直生徒会メンバーだけでは人数が足りないです。もっと言えば、当日の設営や運営のことも考えると、文化祭期間中だけの臨時メンバーを募ることも提案したいのですが……」



 そこで言葉を切って、ちらりとみんなの反応を伺えば、案の定夜鳥くんがムッツリと資料を睨んでいる。



「オレは生徒会に他のヤツが来んの、ヤだからな。特に人間とか数だけいてもしょーがねーじゃん」


「雷護……、雪守ちゃんだって人間なんだからさ」


「雪守は人間だけどオレより頭いいし、テキパキしてるからいいけど、他の人間は違うだろ? オレ鈍臭いヤツと一緒に仕事すんのヤダもん」



 これである。


 夜鳥くんは根は悪い人ではないのだが、良くも悪くも自分に正直だ。自分より能力の低い者は徹底的に嫌う。だから必然的に人間は嫌い。



「絶対ヤダ!」


「ううーん……」



 しかしながら現実に人手は足りず、文化祭まであと1ヵ月しかないのだ。妖怪は基本貴族が多いので私用で忙しい者も多く、協力を取り付けにくいだろう。

 ここは妖怪だの人間だのにこだわらず、協力してくれる人を一人でも多く集めたいのだが、さてどうしたものか。



「――夜鳥、じゃあこうしよう」



 悩んでいると、九条くんが声を上げ、みんなが一斉に九条くんへと注目する。



「臨時メンバーへの指示、統率は俺と雪守さんで受け持つ。その際に使用する部屋は生徒会室でなく、空き教室を利用しよう。夜鳥には引き続き、生徒会室で予算の管理を任せる」


「え……」


「それならば君は他の生徒と接触することは無いし、自分の仕事に集中できるだろう? ……それでいいね?」


「は、はいっ! それなら確かにオレには願ってもないことです! ありがとうございます、九条様!!」



 有無を言わさぬ威圧的な金の双眸に、夜鳥くんは姿勢をピシッと正して答える。



「…………」



 なんと……機嫌を損ねるとしばらく何を言っても聞き入れない、あの夜鳥くんを一瞬にして丸め込んだだと……? 


 図らずも貴族社会の縮図の一端を垣間見た気もしたが、思ったより早く話がまとまって何よりだ。やっぱり九条くんが居てくれた方が、場が引き締まっていいのかも知れない。



「空き教室の使用については、僕が職員会議の時に先生方に伝えておきますね」



 木綿先生も九条くんの生徒会長っぷりが嬉しいのか、ニコニコとしている。

 私も早速後で臨時メンバー募集のお知らせを作成するとして、さて次の議題は――。



「そういえばさぁ、雪守ちゃん。うちのクラスの出し物って、〝執事あんどメイド喫茶〟だっけ? もしかしてボクたちもコスプレするの?」



 そこで急にふと思いついたように雨美くんが聞いてくるので、私はこくんと頷いた。



「あー、うん。一応人数分衣装は用意するつもり。けど私達の場合、当日は生徒会の仕事優先だし、多分衣装着て接客する機会は無いと思うけどね」


「そっかぁ、残念」



 私たちのクラスの出し物は、口に出すのも恥ずかしいが〝執事あんどメイド喫茶〟である。

 最初はコスプレ喫茶などと、更にトチ狂った案が飛び交っていたので、なんとか力業で執事やメイドといったまだ一般的そうなものに、私が落ち着かせた経緯があった……。



『雪守さんって本当に血が流れてるの!?』


『横暴だわ!!』



 コスプレ喫茶を却下した時、かなり(主に女子たちに)ブーイングを受けたが、その時の「ああ、神琴さまに軍服を着て(ののし)って頂きたかった!」や、「いっそ妖狐姿で私を燃やして頂きたい!」といった言葉は聞かなかったことにしたい。

 ていうかこれ決まった当時は九条くんはまだ保健室の住人で、文化祭に参加するかも不確かだったのに、ものすごい熱量である。



「雪守ちゃんのメイド姿見てみたかったのになぁ~」


「いやいや」


 

 うーん……でも私のメイド姿はともかく、九条くん、雨美くん、夜鳥くんと、それぞれ系統は異なるが、いずれも煌びやかな顔立ちが揃った生徒会である。先ほどの女子達ではないが、確かに生徒会の仕事で接客する機会がないのは、実に惜しいとも言えた。

 まぁ九条くんについては、機会が無くて正解かも知れないけどね。女子の熱狂が桁違いだろうし、そもそもこの人の場合どう考えても執事というよりご主人様だろう。



「ふはっ! 水輝も執事っつーより、メイドの方が似合いそうだよな」



 と、そこでピシッと姿勢を正したままだった夜鳥くんが、とんでもないことを言い放った。



「――――」



 瞬間、場の空気が凍りつき、これに慌てたのが私である。



「や、ややや夜鳥くんっ!!」


「あん?」



〝早く謝って!!〟そう言いかけたのだが、しかしその前にドッ!! と、恐ろしいまでの妖力の迸りを感じ、とんでもない轟音(ごうおん)が響き渡った。



「~~~~っ!!」



 それに耳を塞いでやり過ごし、恐る恐る音の先を見れば、壁にめり込んでずぶ濡れの夜鳥くんが見える。あわわ。



「てめぇ、雷護、今なんつった? ボクには執事よりメイドの方がなんだってぇ?」



 ドスの効いた声を出しながら、雨美くんが夜鳥くんへとヒタヒタと近づいて行く。あああ、遅かった。


 この雨美くん。普段はタレ目で背が小さめの、女の子みたいに柔和な雰囲気の男の子なのだが、この〝女の子みたい〟というのが本人の多大なコンプレックスらしく、それを言われるとこのように豹変しちゃうのだ!



「うっせぇ! 女みてぇなヤツに女みてぇって言って何が悪りぃんだよ!?」


「てめぇ、まだ言うか!!」



 夜鳥くんも言えばこうなるって分かっている癖に、何度も同じことをやらかしている。なにせ良くも悪くも自分に正直な男だ。思ったことは何でもストレートに言う。

 とはいえ、このままでは会議どころではない。早く場を鎮めなくては。



「え、えーと、二人とも。まだ議題あるし、とにかく席に着いて……」



 ゴオォォォォン!! ドオォォンッッ!!!


 しかし蚊の鳴くような私のか細い声は、雷と水の妖力がぶつかり合う爆音に一瞬にしてかき消されてしまう。あああ……。



「も、木綿先生……」



〝助けて〟と、すがる様に先生の顔を見るが、しかし二人の強力な妖力に当てられたのか、白目を剥いて伸びている。ダメだこりゃ。

 し、仕方ない! 先生が使い物にならないなら、私がなんとかしなければ……!



「……っ!?」



 だがそこで、不意にチリッと頬が焼けつく感覚があり、私はハッと視線を上へと彷徨(さまよ)わせる。



「え……?」



 手のひらを差し出すと、パラパラと火の粉が落ちた。

 あれ……? そういえばさっきから、九条くんが妙に静かだったような……?



「――――っ!!」



 それに思い至った瞬間、私は勢いよく九条くんを見る。すると彼の右手からはもうもうと炎が上がっていて、私は目を剥いた。



「雨美、夜鳥、君たちいい加減にしなよね」



 静かに発せられた声が、やけにハッキリと頭に響き……。



 ――その後のことは一瞬だった。



 完膚なきまでに燃やし尽くされた雨美くんと夜鳥くんは、ずぶ濡れだった筈がすっかり焼け焦げて。とばっちりの火の粉をモロに被ったらしい木綿先生が、「熱いぃ!! 布だから燃え尽きちゃうぅぅ!!」と騒いでいた。


 こうしてドタバタのまま、九条くんを迎えて初めての生徒会は終了したのである。



 本日の生徒会活動報告。

『やっぱり妖狐の火は怖い』



キャラメモ2 【雨美 水輝 あまみ みずき】

高校2年生で生徒会書記 

蛟一族で貴族

ツヤツヤの青い髪にタレ目な青い瞳

背は低めで柔和だが、女扱いされると豹変する


キャラメモ3 【夜鳥 雷護 やとり らいご】

高校2年生で生徒会会計

鵺一族で貴族 

ツンツンの黄色い顔にコワモテ三白眼の黄色い瞳

能力至上主義で、一度認めた者には友好的


キャラメモ4 【木綿 疾風 ゆう はやて】

生徒会顧問であだ名はもめん先生

本性は一反木綿

茶髪のロン毛で瞳も茶色い

リアクションがいつも何かと激しい

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