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星火燎原  作者: 更紗 悟
第五章【血戦】
97/117

見所

 

     2


 最初はゆったりと近付いて行き、それから全力へと緩急を付けて、サイトは敵陣に突撃していった。ライ・鶏たち直属の統士たちも、その後に続く。

 気合の声を上げ、サイトは剣を振るう。一薙ぎ、その返しで、周囲にいた二人の統士を叩き切った。

 目聡く次の狙いを定め、疾走してその勢いのまま、切り捨てていく。サイトに従うものたちも、それなりの達人ばかりである。道を切り拓くように、彼らの行く先の敵は倒れていく。

「さて、どこからか」

 周囲を見渡し、まずはどの三大将から仕留めるかと、サイトは素早く思案した。

 側面では、リェンがベアトと対峙している。中央、やや外側ではラヅモが、セグに見捨てられた部隊を率いており、ルンルスを抑えて善戦している。バシーに迫るデトーを必死で抑えているのは、戦闘経験の浅いヨウ。非常に危うく、トンの二の舞になりかねない。

 ここだな、と素早く決断して、サイトはそちらに向かおうとした。だが、その前に立ち塞がったものがいた。

「サイト・成。行かせないぞ」

 緊張の面持ちでいるユト階の若者に、サイトは声をかけた。

「確か、サイアトンとか言ったか」

「俺の名を……?」

「ああ。見所があると思った奴は覚えている」

 サイアトンは、一瞬身震いしたような仕草を見せた。そして、「光栄だ」 と、呟いた。

「お前、こちらに来ないか?」 と、サイトは唐突に誘いをかけた。

「な、何を言っているんだ?」 とサイアトンは素直に狼狽を見せた。

「直感だが、気に入った。お前、生粋の煌人じゃないだろう。立ち振舞いからして、むしろ瑗が長いのではないか?」

 サイアトンは目を(しばた)かせ、それから、ああ、と頷いた。

「ターナにいた。キョウだからと、虐げられてきた。そこで、ダズグスル様に拾って頂いた」

「ほう。目の付け所は正しいようだな。お前は、強くなる。見所がある、ということだな。だから俺も、誘った」

「買い被り過ぎだ」

「そうかな」 といって、サイトは剣を構えた。「では、こうしようか。俺がお前を打ち負かせば、お前をどうしようと勝手だな? そうなれば、俺の元に来る事を考えてくれ」

「……俺が勝ったら?」

「お前の好きにしていいさ」

 短く息を吐き、サイトは一歩踏み出す。滑らかに重心を移動させ、そして体重を乗せた次の一歩を強く踏みしめる。気合のこもった一撃を、サイアトンは必死の形相で受け止めた。


    *


 一撃を何とか跳ね返し、今度はサイアトンが切り込み返してくる。サイトはしっかりと受けて、また攻守が交代する。まるで稽古をつけているかのように、サイトの動きに合わせてサイアトンは反応する。疾風のように速く、それでいて重いサイトの一撃を、サイアトンは辛うじて防ぎ続けた。

「やるな」とサイトは嬉しそうに言った。

 必死に一つ一つの斬撃を捌きつつ、余裕なんてないはずのサイアトンも、笑みを浮かべて答える。

「そちらこそ!」

 やはり、自分の直感は間違っていない。是非、この若者を仲間にしたいものだと、サイトは本気で思うようになっていた。ならば、こちらが力を示さねばと、サイトは気持ちを切り替えた。

「うわっ」と、サイアトンが慌て始めた。

 サイトは繰り出す一撃一撃に、重さと殺意を載せていった。それでいて、技を繰り出す速度も徐々につり挙げていく。

 サイアトンは何とか食らい付いてくるが、それも長くは持たなかった。速度と力、どちらかしか追いつかなくなってくる。やがて総合的な力量差が露骨に出るようになり、サイアトンだけが傷を増やしていった。それでも、致命的な一撃だけは食らわないようにと、サイアトンは粘り続ける。

 これだけの連撃、そう長くは続かず、息が切れるはず。そこまで立っていられたら勝機はまだあるはず―――というサイアトンの目論見が透けて見えるようだった。その上で、サイトがこの激烈さをまだまだ維持できるのだと悟り始め、驚愕していた。

「終わり、か」

 サイトは言って、一気呵成に攻撃を加える。付いていけなくなり、サイアトンは傷つき、ついに崩れ落ちた。

「起きたら来い。新しい世界を見せてやる」

 意識を失いつつあるサイアトンに、サイトは言った。




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