隠れた輝き
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「申し訳ございませんっ!」 と、エヌイは繰り返した。何度めかの謝罪に、さすがに面倒になったスクルは手を振って遮った。
背後から近寄ってきたスクルをビド蒐人か何かと勘違いして、エヌイは普段のように打ちのめそうとしたのだという。
スクルにそのつもりはなかったと知った後、エヌイは繰り返し陳謝した。態度が一転した女に、スクルは顰め面をしていたが、ふと見上げてくるエヌイの瞳を見て、こちらも態度が軟化した。汗やら埃やらで、汚れてはいるが、微かに潤んだ眼差しは充分魅力的に見えたからだ。
調べものと聞いていたが、こんな荒れ地で何をしていたのかと、スクルは問うた。
資料にと思って周囲の岩石を拾い集めていた所、興味深いものが出てきたため、没頭してしまったとエヌイは答えた。そこで約束を反故にし続けていた事を思い出し、また謝罪の弁が並べられようとするのを、慌ててスクルは留めた。
「普通の石ころだよな。何がそんなに面白いんだ?」 とスクルは不思議がる。「輝石ならともなく、そこらの石ころに価値はないだろうに」
自分の領域に相手が踏み込んできたと思ったのか、エヌイの顔がぱっと輝いた。
「それが、そうでもないんですよ」 と、嬉々として語りだした。
輝石と呼ばれるものは大変貴重で、主に交易によってもたらされる。
地中深く眠っているという話を真に受け、山を掘って一攫千金を狙う者もいる。確かに、そうした輝石が眠る地所を探し当てる事ができたら、その国にとって重要な輸出資源となる。
エヌイの石探しが宝の在処に導いてくれることを期待して、援助を申し出るシントもいるらしい。
とはいえ、そんな宝の山がすんなり見つかるはずがない。偶然見つかったとしても、精々の所が、それらしき色をした欠片、という程度だ。
エヌイは、そうした中で、黄緑色の光沢を持つ石を見つけ出した。といっても、岩石のほんの一部に混じっているだけで、大半は価値のないごつごつとした岩であった。しかも、輝石として扱われていたものに類似した光を放ってはいるが、緑の色合いが強すぎた。では、偽物かと切り捨てるには、勿体無い物珍しさはあった。
水を得た魚のように、エヌイは、活き活きと話し、止まる気配はない。これでは日が暮れてしまうと思ったスクルは、続きは街に戻りながらと彼女を誘った。
一切着飾っていないので判然としないが、スクルはエヌイの隠れた美しさに気づいていた。せめて垢などを落とし、新しい着物に着替えさせ、どこまで綺麗になるか見てみたいと思った。
先ほどの乱闘の所為なのか、身分を示す玉が胸元からちらりと見えている。飾り気のない茶色い輝石であり、シト級にしては外輪の数が少なすぎるように思える。壊してしまったか、あるいは、奪われても良いように、そこら辺の石を偽物としてつけているのかもしれない。玉を失うとビドとみなされるので、こうした小細工をすることは低い階ではよくあることだった。
そんなみすぼらしいものではなく、きちんと着飾った姿を見てみたいものだとスクルは思った。
そんなスクルの内心に気付いていたのか、いないのか。エヌイは石の魅力について熱心にスクルに語り続けた。




