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異訪豚  作者: 丸樹
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協力要請

カランから少なくない驚きの空気が発せられる。


「先程狩りをする住人の方にお聞きしました、この森では近頃魔獣が活発化し、攻撃的になっているため気が抜けないと。またその原因が不明のままであるとも。私達はその活発化、違法業者達による狩猟が原因であると考えています。こちらの手の者によって、違法業者が流通させている商品の中に魔獣の姿が確認されました、それもかなりの数。しかも国の近辺ではこの森にしか生息しない希少な魔獣の姿も確認されています。我が国は魔獣の過活動による環境の急変、及びそれによる資源の減少や人的被害を考え魔獣の捕獲、緊急時以外の殺害を厳しく規制しています。罰則は大変に重いため、違法に捕獲を行う者達も各地で手広くというわけにはいきません。発覚の可能性が上がってしまいますから。ですので、希少魔獣の姿が確認された時点で私達は違法業者が魔獣を狩っている場所はこの森であると見当をつけ、調べ始めたのです」


魔獣も普通の生き物と同じく、環境によって生息する種類は変わる。そのため、魔獣についての知識さえあれば何処から来た個体なのかを想像することも可能だ。


「魔獣には知能の高い個体も多いため、同じ地域で何度も狩猟を続けたりすれば警戒心も上がり攻撃的になる事もあります。そうなった場合の危険性は、山犬や熊などとは比べ物になりません。この里の皆様は、魔獣の跋扈する森で生きていらっしゃる。つまり魔獣の危険や生態を良くご存じの筈。その皆様をして危険視されるほどの状況・・・人に狩られ、殺気立っているものと考えられませんでしょうか」

「・・・・・・・・」


カランは並べられた内容を噛み砕いているのか沈黙して動かない。

魔獣の危険性についての発言に、カランの後ろで黙って聞いていたブンザバンザは内心同意する。

魔獣は通常の獣に強い力を足したようなものが多い。高い知能、大きな体、並外れた膂力。山犬の群れや熊が危険ではないというわけではなく、敵対した場合魔獣がそれに輪をかけて危険という話である。

セシリアという少女の口調と表情は真剣そのもので、瞳には誠意と熱意が感じられるようだった。

デューレス一行は変わらず視線だけで周囲への警戒を続けている。

ブンザバンザは気まずくて離れることも出来ず、かと言って何か発言できるほどの関係者でもない。やりづらくて仕方なかった。


「・・・・確かに、魔獣の活発化、凶暴化は事実だ。しかし魔獣は生き物、何が原因で凶暴化するかなど予測出来ない以上、今話された内容が原因とも言い切れない」

「仰る通りです。しかし、こちらもかなりの期間情報収集とそれに伴う予測を続けた結果、今回の行動を起こしたのです。もしダルケイン様との会合をお許しいただけるなら、会合の場で集めた情報をお見せする用意もございます」

「・・・・・・・・・」


再びの沈黙。カランはかなり悩んでいるようだ。

何しろ内容が内容である。決して無視はできないが、だからと言って初対面の人物からの膨大な情報を鵜呑みにするのも大変なのだろう。

しかし戦士団長として培われた判断力か、カランはゆっくりと口を開く。


「長との会合中は全ての武器防具を預からせてもらう。用途の不明な所持品も同様だ。加えて私が選んだ戦士団員を数名、同席させる。不審な点を感じたら会合はすぐに中止、場合によってはあなた方をこちらで拘束する・・・・どうだ?」

「それで構いません。私達の行動が発覚しない範囲でしたら、戦士の方も何名呼んでいただいても結構です。感謝いたします、カラン様」

「お嬢・・・!」

「デューレス。違法業者は将来的に我が国の大きな害となります。それにいつ気取られ逃げられるかも知れない、これは機なのです。それにこちらが押しかけ問題を持ち込んでいる以上、信用云々を論点に行動を渋るなど里の皆様への侮辱です。慎みなさい」

「・・・・はい」

「行商の代表に知られたくないのだったな。夜には長と代表が長の家で食事を始めてしまう。そうすると秘密の会合はもう難しい、今から急ぎで準備しよう。支度が出来次第呼ぶから待っていてほしい」

「分かりました、お呼びがかかるまでは待機させていただきます。表向き、私達は全員行商の護衛、加えてセシリア・カインドマンはこの場にいない事になっていますので、人前ではそのように接していただければと思います。では」


そう言い、少女達は踵を返し行商達のいる方へと歩き去っていった。それを見届け、カランが張った気を抜くように息を吐く。そして背後で直立していただけのブンザバンザに申し訳なさそうな顔で振り返る。


「ブン、散々待たせてすまないんだが、その・・・」

「聞いてた聞いてた。里の一大事かもなんだろ?俺なんか気にせず動きな」

「本当にすまない、案内を買って出た身なのに」

「良いって。なんか手伝うことあるかい」

「いや、客人に・・・」

「今の会話聞いて何も考えずに遊んでまわるのは、まあちょっと心持ちが良くねえんだよ。俺が出来そうな範囲ならなんでも言ってくれ」

「・・・正直に言えば人手が欲しくてたまらないところだ、ご厚意に甘えさせてもらおう。私はすぐに里長に話を通しに行く。その間に、ブンに呼んで来てもらいたい者がいるんだ」

「おう」

「クジムを覚えてるか?昨日門で話しかけてきた擬猫人(ケットシー)、毛むくじゃらの男だ」

「ああ、あの灰色の」


ブンザバンザは、昨日自分達と会話した小柄な猫のような男を思い浮かべる。


「彼を呼んできて欲しい。戦士団副長で、信用のおける男だ」

「あの人副長さんだったのか」

「ああ。体は小さいが戦いの腕は立つし、里の警備の責任者だ。里内で戦闘が起きた時はきっと大きな力になる」

「素人意見なんだが、人選ばなくても腕っ節に自信あるやつ目一杯集めちまえや良いんじゃないのか?あんた方は巻き込まれた側なんだし、怪我人とか出したくないだろ」

「それは私も考えたが・・・あの少女達が、魔獣の捕獲に関わった顔を完全に把握できていない様子なのが気になる。もし今里にいる商人達に賊の仲間が紛れているとするなら、あまり大勢で動くと気付かれ逃げられるかも知れない。その結果今後も賊の魔獣狩りが続いたりしたら、痛手を負うのは私達だ。魔獣被害はこの里にとってとても重大な問題だ。あまり長引くと里外での食料調達が困難になり皆の生活が圧迫されてしまう」


そう言われて、ブンザバンザもカランの意図を把握する。

もともとカラン達と同じく森の中で生活していたブンザバンザである。森を危険少なく歩けることの恩恵は良く理解できるのだ。先日食べた蜜玉は記憶に新しいが、あれを一抱え集める度に魔獣の目の前を通らなければならないとしたら、命がいくつあっても足りないだろう。少なくともブンザバンザはそんな日常は御免だ。


「ばれないようにこっそりと、か」

「そうだな、頼めるだろうか」

「おう。どこ行きゃ良いんだ?」

「今なら休憩中だろうから詰所だな。門近くにある石造りの建物にいるだろうからそこへ行ってくれ。ああそうだ、ついでだからミミンとベスランも連れてくるようにと伝えてくれないか」

「ええと、石造りの建物に、クジムとミミンとベスランね。集合は里長さんとこで良いのかい」

「そうだ、悪いが頼む。大騒ぎはしないようにな」

「あいよ。じゃあ後で」


なにやら物々しい話に巻き込まれている自覚はあったが、そこは世話になる里のためである。これくらいの手伝いは苦にもならない。

カランと別れ、ブンザバンザは戦士団詰所に歩き出した。

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