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南沢寺での惰性的な日々はエモい。  作者: 濃紺色。
南沢寺の夜は屑の排除にちょうどいい。
24/51

「ガスマスク男子高生」。

時は遡り……。

舞台は、南沢寺高校の校舎裏。


ようこそ、血生臭い南沢寺へ。

南沢寺の治安を守る。

それが俺の使命だ。

昔から正義感が強かった。悪が嫌いで、必死に善を求めた。

弱い者を助け、悪を倒し、改心させる。

これが、俺のポリシーだった。

通常時の俺がいくら弱気な男子高生でも、これを被れば、もう別人だ。


「がっ、んぎっ、ぐっ、がっげぐっ!」


南沢寺高校の校舎裏。早速、暴力の音が聞こえた。

俺は周りに誰もいないのを確認し、それを被る。

そして、


「止めろ!!!」


彼等の前に飛び出した。

そこには、4人の男子がいた。壁に背中を預け、両脚を投げ出して座っている男子が1人と、それを囲むようにして見下ろしている男子が3人。

俺はこの3人を知っている。

3人のうちの1人、リーダー格の龍太郎りゅうたろうが不気味に微笑んだ。


「誰かと思えば……」


子分の2人、弘一ひろかず孝介こうすけも後ろで同じように微笑んでいる。


「『ガスマスク男子高生』だ。お前等を倒しにきた」

龍太郎、弘一、孝介。こいつ等は俺と同じ2年生の不良グループだ。倒れている男子は見覚えがない。……まさか、1年生か?

「お前等……何故、こんなことをした?」

「何故? ……はっ」


龍太郎は鼻で笑った。


「舐めた態度しか出来ねぇ後輩へ、先輩からの指導だぜ」


やはり、1年生か。


「理不尽な暴力は、駄目だ。しかも、歳下に……」

「あぁ……ごちゃごちゃごちゃごちゃうっせぇなぁ!」


龍太郎と弘一がこちらに向かって走ってきた。孝介はその後ろでクスクス笑っている。

きっと、今、この黒いガスマスクを被っていなかったら、俺はビビり倒していただろう。

だが、今、俺は「ガスマスク男子高生」だ。

戦う以外に選択肢はない。




「……大丈夫か?」


俺は傷だらけの彼に手を差し伸べた。

龍太郎達は既に去った。ボコボコにしてやった。


「……んーだよ、偽善者か?」


黒い前髪から覗く彼の三白眼が俺を睨んだ。


「いや、そんなんじゃない。俺はただ……」

「人を助けて気持ちよかったかよ。なぁ……屑」


何故、そんなことを言われなくてはならないんだ。

俺は差し出した右手を引っ込めた。

彼は右手でわしゃわしゃと頭を掻いた。


「せっかく……俺の楽しみを、奪いやがって」


楽しみ? 何のことだ?

俺は首を傾けた。

ふっ、と笑って彼は右横を向き、ぷっ、と弾丸のように口から血を地面に飛ばした。


「惚けんなよ……分かってんだろーが、お前も……」


彼は再度、こちらに2つの三白眼を向けた。

得体の知れない迫力と殺気がその両目にはあった。


「お前も俺と一緒……暴力を求めてる」


ふざけるな!

俺は彼の制服の胸倉を掴み、無理矢理立たせて、壁に押し付けた。


「いいか。俺は、お前とは違う。俺は正義の為に戦っている。悪を倒す為に!」


それでも彼は余裕そうに右側の口角を持ち上げ、不気味に微笑んだ。


「ちげーだろぉが、カス。お前も俺と一緒。悪を倒すっつー名目で、自分の暴力に酔いしれてんだろーが。あいつ等を見付けて……暴れる口実が出来て、ワクワクしてるよーに見えたけどな、屑」


一体、何なんだこいつは。

俺は彼を離すと、後ろに下がった。

彼はネクタイを緩め、ズルズルと背中を壁に押し当てながら、座り込んだ。

俺はそれを無言で見ていることしか出来なかった。


「『ガスマスク男子高生』、だっけか?」


彼は再び、俺を睨み付けてきた。


「次、俺の獲物獲ったら、お前も殺すからな……屑が」


いいだろう。望むところだ。


「その前に、俺がお前を倒す……悪が」


彼の殺気を背中に強く感じながら、俺はその場を後にした。

三白眼の彼は、一体、何者なのか……。

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