#86 仙歌竜コムジウル
「え〜マジで言ってんの?むりむり。俺ゴルサヴァクすら倒せなかったんだよ?無理に決まってんじゃん。」
「我が主人!!しっかりしてください!!!」
「Z Z Z 。」
「ボス〜!!」
場は荒れていた。
俺が戦うのを放棄し、それをミルドが説得し、コムジウルの咆哮を受けて眠っているヨルムン、そしてそれを助けようとする部下たち。
コムジウルの咆哮はゴルサヴァクとは違い、歌声のようなものだった。
とっさに俺は耳を閉じたがヨルムンは間に合わず、眠ってしまったようだ。
「ボス!!起きてください!!!!」
「Z Z Z Z Z。」
「お前ら!!ボスを助けるぞ!!!」
「このままだと前みたいに……。」
部下がそう言いかけた時、眠ったヨルムンは踏み潰され、粉々に砕け散った。
「ボス〜!!!」
ヨルムンの死体には蒼い血がぶちかまれた。
「ボス!!今新しい体を!!!」
部下の一人がそういうと、アイテムボックスからヨルムンの新しい体を取り出した。
蒼色の血は自分で動き、体へと入っていった。
「あー痛かった。」
「ボス、無茶はやめてください!!」
「無茶じゃない、相手の力量を測ろうとしただけだ!!!」
ヨルムンはそう言って聖剣を構える。
「お前ばっかしにかっこつけさせねぇぜ。」
俺は重い腰を上げ、ようやく立ち上がる。
本当はめんどくさいけどヨルムンの姿が正義とかぶるからな。
「ミルド、二刀流できるか?」
「一応できますが。」
「ならOKだ。俺に合わせろ。」
そう言って俺は一方に魔剣、もう一方に業物の剣を持ちコムジウルに飛びかかる。
ミルドは自分が持っていた『亡き者の聖剣』と邪神となったアーサーが持っていた『失われし聖剣』を構え、俺に続く。
俺は自分の脚力だけで空へと舞い上がり、剣を二本構え、空中で回転する。
ミルドはそれを見計らってコムジウルの意識を自分の方に向けさせている。
ミルドの二刀流の連撃がコムジウルに襲いかかる。
しかしコムジウルの甲羅は硬く、ヒビも入らない。
だがそれでいい。
本命は俺だからだ。
「食らえ、『リ◯ァイ流二刀流剣術』!!!」
俺は進撃の非人という漫画に出てきたキャラを真似た一撃を喰らわせる。
空中から回転した勢いでコムジウルの甲羅に大ダメージを与えていく。
摩擦で回転が止まりそうになるが自分も体を回転させることで摩擦を最低限にし、何度も何度もダメージを与え続ける。
そしてついにコムジウルの甲羅にヒビを入れることができた。
「よっしゃ!!!」
俺は目が回ったため一旦コムジウルと距離をとる。
「どうだみた……ウプッ。おぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
昔から三半規管が弱いため、盛大に吐いた。
コムジウルがそれをラッキーだと言わんばかりにこちらを睨み、ブレスを吐こうとしてくる。
「あとは私にお任せを!!!」




