#41 本体は◯◯
ヨルムンは必死に体に血を戻そうとするが量が多すぎて一度に戻すことは出来なさそうだ。
「がはっ……。」
「ぼ、ボス!!」
ミルドとゼロが戦っていたヨルムンの仲間たちがヨルムンに近寄る。
「ボス、やっぱりその体じゃ無理です!! 今日のところは引き上げましょう!!」
「だめだ!! 俺は正義のヒーローだ。 悪を逃すことはできない!!!」
「ボス、ヒーローでも休息は大事です。 それにこの体は予備のものを急遽出したものでメンテナンスが済んでいなかったじゃないですか!! くそっ、昨日あんなやつに会わなければボスの体のストックはまだあったのに!!!」
「おいちょっと待て、さっきからお前らは何をいっているんだ? 体のストックやらなんやら。」
「悪に教えることはない!! うせろ!!!」
仲間の1人が俺にひどい罵声を浴びせる。
俺は無言で魔剣を構える。
「やめろ!! それ以上近づくなよ!!!」
仲間の1人が剣を構えてヨルムンを庇うように立ち塞がる。
「やめろ!! お前がかなう相手じゃない!!」
ヨルムンが必死に止めようとするが仲間はやめない。
「俺は昔ボスに命を救ってもらったことがある。 その恩を今ここで返します!!!」
そうかっこいいセリフを言うと他の仲間も立ち上がって。
「俺もやるぞ!!」
「ボスには傷一つ付けさせねぇぞ!!」
「たとえ俺らが死んでもボスには近づけさせねぇ!!!」
……。
意外と仲間思いなんだな。
「別に俺は殺そうとなんてしてないぞ。」
「「「「え?」」」」
ヨルムンの仲間の声が一斉に固まる。
「俺はただ体のストックがどうちゃらこうちゃらってことが聞きたかっただけなんだけど。」
するとヨルムンの仲間たちは一斉に力を緩め、倒れる。
ヨルムンは「なんだそんなことかよ。」と言わんばかりの顔でこちらを見てくる。
「あぁ、教えてやるよ。 俺は確かに転生した。 でもそれは人間に転生したわけじゃなかったんだよ。」
「というと?」
「俺の本体は体じゃなくて血のほうだよ。」
そう言って体から蒼色の血がずるずるとヨルムンの体から出てきた。
えぇ、嘘だろ。
「俺は転生に失敗して血として転生した。そして女神から体をもらい、俺たちの技術で複製して一種の不死身状態にしたわけ。 まぁ要するにこの体は人間で言う服みたいなものだ。」
「お前も色々あったんだな。ところで昨日会ったあんなやつって誰のことなんだ?」
「あぁ、そいつとは俺らが海の中にある海洋鉱石を発掘していたときに現れたんだ。」
海洋鉱石ってあれか。
あの海の中でしか発掘できないレア鉱石のことか。
「突然海の中で歌が聞こえてきたんだよ。」
「海の中で歌?」
「あぁ、それはもう綺麗な歌声だった!!! そしてだんだんとその歌が近づいてきてる感じがして海の底を見たんだ。 そしたらそこにそいつがいたんだ。」
うん。
悪い予感しかしないぜ。
「そいつの名は〈歌仙竜〉コムジウルだ。」
やっぱり竜だった。
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