#21 人間の国へ
前章のあらすじ!!
バジ砂漠の主、エンペラーバジリスクを倒す途中、昔グラトニーをいじめていた転生者達に突っかかられその1人、ケンヤとの勝負に苦戦し初めて人間を喰った!!
体が軽い。
それに今まであった余分な感情が抜け落ちたみたいだ。
とても気分が良くて生まれ変わったみたいだ。
ちょっと視界が赤みを帯びているけど。
人を食べたからか?
人食べたくらいでこんな麻薬やったみたい(比喩表現)に気分良くなるっけ。
とりあえず今の自分を見てみたいから鏡で写すか。
俺はポケットから小さな鏡を出して自分を写す。
「……。流石にこれは笑えないな。」
俺の目は真っ赤に充血していた。
まるで化け物だ。
イケメンな顔はそのままだけど。
ステータスはどうなってんだろ。
「鑑定。」
俺は砂漠の真ん中で静かにステータスを見る。
しかし鑑定は発動しなかった。
かわりに頭の中にアナウンスが。
『個体名グラトニーは暴食の裁きが下されました。よって神からの贈り物である鑑定の能力は剥奪されました。』
今の俺には暴食の裁きが下っているらしい。
この裁きっていうのが何かわからないが今の俺は気分がいい。
人間を辞めたような感じだ。
「ふふっ。」
なぜだかわからないが笑みがこぼれた。
とにかく俺は人間ではなくなったわけか。
これからどうしようか。
女神を倒すにはそれ相応の力が必要。
力を手に入れるには自分より強い奴と戦わないといけない。
自分より強い奴を探すには情報が必要だ。
なら当初の目的だった人間の国へ行ってみようか。
女神についてもわかりそうだし。
俺はそう考えながらエンベーラーバジリスクを完食し、身支度を済ませて人間の国へ向かった。
[神聖王国]
「ここが人間の国か。」
俺は人間の国へ足を踏み入れた。
小説とかでよくある入国審査などがなかったのが残念だが、すんなり入れたのはいいことだ。
それにしてもこの国は人間しかいないんだな。
奴隷以外の亜人が一人もいない。
ま、情報集めるためにぶらぶらしとくか。
まず異世界といえば冒険者ギルドだろと思ってそれっぽい建物に行ってみようと思ったが、
「え、ここ?」
国の人に教えてもらった通りのところに行けばそこはボロっちい小さな建物だった。
一応中も確認してみたいから静かに扉を開けると、中からは酒とタバコの匂いがして、床も汚れまくっている。
しかも冒険者と思わしき人はおっさんばかりでとても騒がしかった。
俺はスッと扉を閉める。
この悲しい現実を受け止めようとするが、頭がそれを拒否する。
あんなのが冒険者なんて俺は認めないぞ! と思いながら冒険者ギルドから離れようとすると、
「やめて! 離して!!」
と、女性の声がした。
俺が声の方に行ってみると、そこには若い女性が冒険者らしい男3人ほどに腕を掴まれていた。
この世界はどれだけ俺を悲しませれば気がすむんだ!!
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