Hエンド- その後
墓が見える。
三つの墓が。
「……俺死んだのか。」
情けないな。
元の世界に帰れた嬉しさで力が抜けてそのまま死ぬなんて。
「ほんと情けないですよ。」
「こら、主人になんてこというんだ。」
後ろから声がした。
懐かしい声が。
後ろを振り向くと予想通りの二人が浮いていた。
「ミルド、ゼロ……。」
「何泣いてるんです?」
「いや……嬉しくて…………。もう会えないかもって………………。」
子供のように泣きじゃくる俺の背中をそっとさすってくれるミルド。
ゼロも抱きしめてくれる。
「もう一人じゃないんですよ、主人。」
「辛くなったら慰め合いましょう。」
「二人とも……。」
「感動のところ悪いんだけどさ。」
「俺らのこと忘れてねぇよな。」
空から降りてきたのは立派な翼を生やしたセイギとハジメだった。
「3人とも!!」
「聖夜!!もう会えないと思ったぞ!!!!おーいおいおいおい。」
俺以上の涙を流しながら豪快なタックルをかます正義。
そして黒い翼を生やした作業着のハジメが倒れた俺を起こしてくれる。
「ずっと心配してたんだぞ。」
「ハジメ!!お前まだ罪償ってんのか。」
「1000年以上経っても俺の罪は消えることないよ。だから一生懸命死後も償うつもりさ。そういえばよく働く新入りが聖夜のことよく話してたぞ。会いにいってやれよ。」
「新入り?」
俺はハジメに手を引かれ、天界のとあるビルの『償い部、重労働課』の仕事場だというところに連れてこられた。
「あ、聖夜く〜ん!!」
そこにはひたすらに作業服でピッケル両手に道の舗装をしている天之川がいた。
そしてその後ろで監督しているのはこの世界の世界神、早乙女結衣だ。
「久しぶり、聖夜。」
ユイがそっと微笑む。
その空気をぶち壊すように天之川が泣きついてきた。
「ねぇ聞いてよ聖夜くん!!君の彼女さんめっちゃ厳しいんだよ、昨日なんてノルマ達成してないからって鞭で叩いてきたんだよ!!」
「え、ユイそんなことしてんの?」
「そ、そーんなことしてないに決まってるじゃない。オホホホホ。」
そう言いつつ天之川の頭を片手で握りつぶそうとするユイ。
こんな光景を見ていると昔に戻ったみたいだ。
「あ、そういえば聖夜くんもここの課で働くんだよね。」
…………。
「ゑ?」
「あら言ってなかったっけ。聖夜も大量の命を奪ったんだから一生懸命ここで働いてもらうわよ。」
「嘘だろ!?」
「マスター、私たちも一緒に働いて償いますよ!!」
「当然私もご一緒させてもらいます、我が主人よ。」
ゼロとミルドが目を輝かして俺の方を見る。
「あ、一応俺はこの重労働課の課長だから。上司って呼べよ?」
「そんでもって俺が償い部部長だ!!大丈夫、仕事の手順はきっちり教えてやるぞ!!」
ハジメと正義が息を荒げて告げる。
「僕のこと先輩って呼んでもいいよ?」
「じゃあ私はあなたたちの仕事風景を見ながらジュースでも飲んでるわ。」
フンスと胸を張る天之川、鬼畜なユイ。
前言撤回、厳しいわ。
でも、この『今』を俺は噛み締めていたい。
俺は今、
「幸せだ。」