#173 さよなら聖夜
「うぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ!!!!」
アレイスターは金玉を抑えながらうずくまる。
「ま、まさか同じようなことをされるとは思いませんでしたよ。」
痛そうにしているが笑顔はたやしていない。
こいつドMかよ。
やっと衝撃がおさまったのかゆっくりと立ち上がる。
「この痛みはきっちり返させてもらいますよ。」
アレイスターは壁に陣を描く。
すると壁から銃が錬成された。
その銃は真っ白で羽付の帽子を象った装飾が施されていた。
「僕の愛銃『ホワイトフェザー』です。これには聖属性が付与されてるので注意してください。」
「げぇ、苦手なやつ出してくるなぁ。」
プッ
「え?」
銃弾が俺の体にめり込んでいた。
銃声も何も聞こえなかったのに。
それどころか銃を撃った時に出る火薬の硝煙も出ていない。
「エクストラスキルで銃口を隠して撃ったのか。」
俺は銃弾を体から自力で取り除き地面に捨てる。
「銃声も硝煙もそれどころか弾道も見えない銃ですよ。」
アレイスターの銃が少し傾く。
俺がサッと横に避けると俺の体があった場所に銃弾が出現した。
「カラクリがわかれば怖くねぇな。」
「残念ですが銃はダミーなんですよね。」
ドスッ
背中が熱い。
刺されたのか。
「大体新しい武器や魔術が出てきた時はそれで自分を追い詰めてくると錯覚していたようですが残念でしたね。」
アレイスターは俺に刺したナイフをぐりぐりとねじり、ザシュッとナイフを引き抜いた。
「人間の死はあっさりと突然やってくる。だからその時その時を必死に生きるもんなんだよ。君も人生は楽しめたかい?今となってはそれも聞けないけどね。それじゃあさようならだ、神成聖夜くん。」
アレイスターは完全に心臓が止まっている聖夜を確認し、逆行時計の元へと向かう。
「ようやく会えるよ、愛夜。」
アレイスターは逆行時計にそっと触れる。
まるで心臓の鼓動のようにガチン、ガチンと時を刻んでいる。
クロムウェルとリンはどうなっただろうか。
あの二人なら勝てていると思うが少し不安だ。
あの二人はアレイスターの計画を知っても尚そばにいてくれた。
自分たちが死ぬと分かっていてもついてきてくれたかけがえのない仲間だ。
涙が溢れる。
名残惜しいがこの時計で時間を移動できるのは神とアレイスターだけなのだ。
「ありがとう。そしてさようなら、二人とも。」
逆行時計発動まで残り十分。
神成聖夜死亡。
クリスマスなだけにさよなら『聖夜』、なんつって。
ガハハ




