#162 平凡な少年
俺は地球の日の本の国、日本で生まれた。
まぁその国も世界も本当にいいところでな。
戦いもないし食べ物も住むところも揃っている。
でも刺激がなかった。
それでも俺は平凡な、ごく一般な生活を送っていた。
そんなある日、転機が訪れた。
転移したんだ、別の世界に。
その世界は人間同士の戦いが絶えない世界。
正直がっかりしたよ。
俺は平凡より上も下も求めない主義なんでね。
それでもその世界で愛する人もできてまぁまぁうまくやってたよ。
勝手に転移させられて、勝手に命張らされて、それでも頑張ってたんだよ。
それでも俺には戦いなんて無理だった。
命を奪うのが怖かった。
初めて人を殺した日には一睡もできなかった。
2人目を殺すと身体中に蕁麻疹が、
3人目を殺すと吐き気が、
4人目を殺すととんでもない頭痛が、
5人目以降からは悪夢を見るようになった。
これした人間が俺を地獄に落とそうとする夢だ。
そんな苦痛から逃げたくて俺は戦いを辞めたいとその世界の王に伝えた。
するとどうだ、その次の日に恋人の首が届いたよ。
勝手に転移させられてこの仕打ちだよ。
それ以来まじめに人を殺してきた。
20人目を殺せばもう悪夢は見なくなった。
50人目を殺せば体調がどんどん良くなっていった。
80人目を殺せば快眠できるようになった。
100人目からは人を殺すたびに快感が襲ってきた。
結果、俺はその世界の生物全てを殺した。
転移させた王も、恋人の親族も何もかも。
「そこをアレイスターに拾われたってわけだ。感動する話だろ?」
クロムウェルはハンカチで流れ出る涙を拭う。
その話からミルドが感じたのは狂気。
この男、見せかけでは泣いているが心は大笑いしている。
クロムウェルはヘラヘラしながら数歩下がる。
「俺はアレイスターに拾われた時、希望を感じた。このイカれた俺よりもイカれた男と2人、いやリンを含めた3人なら最高の快感を味わえると!!」
するとそこには同じく数歩下がってきたアレイスターの仲間の女が。
「私は最高の絶望が欲しい。」
「俺は最高の希望が欲しい。」
「「だから仲間になった。俺達、そしてアレイスターの願いの邪魔はさせない!!!!」
ゼロはミルドと背を合わせる。
「勝てる?」
「分からん。」
「マスターは?」
「上で頑張っている。」
「だったらやることは一つ。」
「あぁ。」
「「絶対に阻止する!!」」




