#157 終わり間近
「マスター!!」
「あぁ、帰ってきたぞ。……そういえばゼロとミルドの距離感変じゃないか?俺がいない間なんかしてたのか?」
「え?べ、べっつにー、何もありませんけど〜?」
「えぇ、決して何もありませんでしたよ。」
「…………、まぁいいや。それよりそろそろ神王の階段に行くか。
俺がそういうとゼロはヒシっと抱きついてくる。
「絶対……帰ってきますよね?」
「あぁ、約束するよ。俺が約束破ったことあるか?」
「何回かあります。」
「…………細かいことは気にするな。」
俺はゼロを抱きしめ返しミルドの方を見る。
「お前たち、すぐに帰ってくると思うが俺が留守中国のことは任せたぞ。」
「「はい!!」」
俺は階段に一歩足を踏み出した。
その時、
妙な気配がした。
「主人、上です!!!!」
ミルドが叫ぶ方を見る。
そこには緑髪に眼鏡をかけた男が。
「お前、アレイスター!!」
「やぁ聖夜くん。久しぶりだねぇ。」
アレイスターは静かにほくそ笑む。
この男は少し前に急に姿を消した魔道具店の店主、そして俺に神王の奇石をくれた人物。
「お前、何する気だ?」
「いや何もしないですよ。僕はただ君が神王になる瞬間を見たいだけですよ。」
アレイスターは不気味に笑う。
その目は嘘をついているように見えた。
「…………まぁ君には教えてもいいですかね。僕はこれを使いにきたんですよ。」
そういうとアレイスターの掌から大量の石がボトボトと落ちていき、階段にばらまかれた。
「神王の奇石?こんな大量に……。」
神王の奇石は初代神王の力を具現化させた石で世界に二つしか落ちていないと聞いた。
それが数え切れないくらい大量に転がっている。
「集めるのが大変でしたよ。何せだだっ広い世界に二つしかないんですから。」
「お前、まさか他の世界へ移動したのか?」
世界の移動。
それは神たちですら違反とされていることとユイから聞いた。
それに神王と同等の力がないと無理だとも。
「僕にもね、エクストラスキルがあるんですよ。その力で僕たち3人は世界を移動して石を回収してきたんです。」
「3人?」
「そう、3人です。」
アレイスターがゼロとミルドの方を指差す。
そこには1人のメイド服の女性とシルクハットをかぶった男がミルドとゼロに武器を突きつけている。
「彼らは石を回収途中に出会った仲間たちです。」
「な、何が目的なんだよ。」
「この階段です。」
そう言ってアレイスターは神王の階段に降り立つ。
イェーガーが俺以外に触れることができないと言っていた階段にだ。
「この階段には神王の膨大なエネルギーが秘められている。この近くで作動すれば力を最大限に発揮できるというもんですよ。」
そう言ってアレイスターが指をパチンと鳴らすと背後に巨大な時計が現れる。
そしてばらまかれた神王の奇石が時計へと吸い込まれていった。
全ての石が吸い込まれ終わると、時計の針がゆっくりと反時計回りに動き出した。
「時計が反時計回りに回る。これがどういうことかわかります?」
「…………、まさか!?」
「僕は時を数千年前に戻す。そのためにここにきた。」