#145 そらの彼方
「…………。」
「目覚めたか。」
「意識がある?」
「微量の魔力をやったから意識だけは戻ったはずだ。」
俺の魔力を少し分けた天之川は動けはしないが意識だけは戻っていた。
「なぜ?」
「助けたわけじゃねぇよ。お前の体は時期に崩壊する、その前に見せたいものがあったからな。」
「見せたいもの?」
「ぶっちゃけできるかどうかはわからないけどな。やってみる価値はある。」
「何を言って……。」
俺は天之川に黒い指輪を見せる。
「それは?」
「《裁きの証・傲慢》。こいつは重力を操る技術がある。天之川、お前の不滅の魔力を使って宇宙に行けるかやってみる。」
「……、できるのか?」
「わからねぇけどよ。やってみる価値はあるだろうよ。」
「じゃあ任せるよ。」
「オッケー。じゃあやってみるぞ。」
俺は魔力を固めて天之川と俺を乗せるような地面を作り、膜を作って外からの影響を遮断する。
その地面を反重力に設定した傲慢の力で軽く浮かせた。
「じゃあやるぞ。」
俺は一気に天之川の魔力を空にするくらい吸収する。
魔力は永遠に回復するので1秒も手を止めずに吸い続ける。
その大量の魔力を怠惰で貯蓄、嫉妬で底上げを繰り返し、色欲と暴食で指輪に細かく丁寧に魔力を送る。
超高速で俺たちはどんどんと空へ浮かび上がっていった。
数十分経った後、
俺たちは暗い暗い闇の中にたどり着いた。
「!?」
「体が……浮いた?」
すると突然俺たちの体が作った地面から離れたのだ。
「なんだこれ、身動きが取りづらい!!」
「やっぱり本当だったんだ。宇宙には空気がないから本当に重力がないって!!」
天之川は動けないのでふらふらと無重力に揺られたまま興奮気味に語る。
「なぁ、なんかでっかい球がいっぱいあるぞ。」
「あれは『星』だよ。大いなる空間の無数の世界っていうのはこの星のことなんだよ!!」
その星?っていうのはよく分からなうけどとても神秘的だと俺は思った。
「おい、あそこに光ってる球があるぞ!!っていうかよく見たら燃えてるじゃねぇか。消火しないと!!」
「あれはもともとああやって燃えてる星、『太陽』なんだよ。」
「あれが太陽なのか。太陽ってあったかい魔力の塊だと思ってた。」
俺たちはしばらく宇宙を彷徨った。
しばらく宇宙を漂っていると天之川の指がボロッと崩れた。
「……時間か。」
天之川は寂しそうに星を見ながら呟いた。
「でも最後に夢が叶えられてよかった。何千年もの間、僕の時間は止まっていたようだった。街の人には馬鹿にされ、それでも一生懸命頑張ってこの無尽蔵の魔力を手に入れた。聖夜くんの手助けもあったけどこうして無事に宇宙に来れた。」
ボロボロと涙を流す天之川の体は徐々に朽ち果てていっている。
「お前の魔力がなかったらここには来れていなかった。こちらこそありがとうだよ。」
「……僕たち、別の世界では友達になれてたかな。」
「あぁ、そうだろうな。」
俺がそう答えると天之川は満足したようにニッコリと笑い。
「ありがとう。」
最後にそう伝え、完全に塵となった。
天之川編
完結
この戦いだけ結構本気で書きました。
じゃあ他は本気じゃないって?
ハハッ⤴︎




