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あっけなく

 一気にその体を膨らませる蔦の塊。

 体内に入り込んだスライムと一体化し、俺と同じくらいの大きさまでになったそれが、蔦を突きだし攻撃してくる。


 ただの蔦とは思えない速さ。

 しかし数々のモンスターを屠ってきた俺と江奈にとってはそこまで脅威になり得ない。


 今の俺のオドなら思考が加速されていなくても捉えられる程度の速さ。余裕を持って構えたホッパーソードを振るおうとした、その時だった。


 俺の横をかすめるようにして通りすぎていく無数の魔法弾。

 無色のままのそれは江奈さんの放った物。


 それは、蔦型のスライムの攻撃をことごとく撃ち落とす。伸ばされたまま空中で弾け飛ぶ蔦。

 宙を舞う蔦の残骸を尻目に、圧倒的弾幕が蔦型スライム本体へと迫る。

 弾幕の雨が、到達する。

 絶え間ない着弾の衝撃。その反動で、躍り狂うようになる蔦型スライム。


 その身を削られ、気がつけばコアを残して四散していた。


 ──呆気ない。呆気なさ過ぎる?

 そんな感想を覚えてしまうほど。

 俺はコアに近づこうと一歩踏み出す。


「朽木っ」


 声と共に背中を襲う、ドンッという衝撃。

 前に飛ばされながら体を捻る。江奈に突き飛ばされたようだ。


 一気に加速されていく知覚。

 江奈の魔法弾で千切れた蔦が、ついさっきまで俺がいた場所目掛けて殺到している。

 俺を突き飛ばしたことでちょうど殺到する蔦の前に飛び出した形になってしまった江奈。

 ──蔦自体もモンスターだったかっ


 俺はイドを振り絞りカニさんミトンから酸の泡を撃ち出す。

 一つ、また一つ。


 ゆっくりと流れる時間。


 俺の酸の泡が、江奈に触れようとしていた蔦を一つ一つ撃ち落としていく。

 大量のイドに任せた、力任せの物量。


 ──一つ、取りこぼしたっ


 江奈の足の陰になっていた蔦。俺が打ち落とすのに失敗したそれが、江奈の右足に絡み付く。

 蔦が江奈の足を締め上げる。


「ぐぅっ!」漏れる江奈の苦痛の声。


 俺は意識をその蔦につられそうになるのを何とか制し、まだ宙を舞っている他の蔦を撃ち落とし続ける。


 全ての蔦を酸で溶かし尽くす。

 俺の意識の中の時間の流れが戻る。


 倒れないように踏ん張った俺は、俺を突き飛ばし体勢の崩れた江奈を支えようと構える。


 俺の腕の中に飛び込んでくる江奈。

 すぐさま横たえると、蔦の巻き付いたままの江奈の右足へと視線をやる。


 締め上げられ鬱血し始める江奈の右足。

 俺は慎重にホッパーソードを足と蔦の間へと滑り込ませると、蔦を切り裂き始める。

 何重にも巻かれた蔦が抵抗するようにさらに締め付けを強くする。

 何度目かの試行錯誤の末に、ようやく蔦が全て外れる。


 ──最初の攻撃時、もしホッパーソードで切り裂いていたら、俺の腕に蔦が巻き付いていた……


「江奈さん、ごめん。油断していた」


「全く、よ」とアザになってしまった右足を庇いながら立ち上がる江奈。 


「すまない。怪我の具合は?」


「大丈夫。骨に異常はないわ。さあ、早くコアを回収して脱出しましょう」


「ああ、そうだな」と俺は今度は慎重にコアに近づいていく。


 蔦の残骸をかき分け、ゆっくりとコアを手に取る。

 その輝きを増すコア。

 その時だった。俺の腰に下げていた魔法銃がぶるぶると震え始める。



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