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第一章 エピローグ

 山道も終わり、ようやくアスファルトの上に戻ってきた。

 俺と江奈は、アクアを倒したあと、意識の戻らないミズ・ウルティカを背負い、ダンジョンを脱出しようと道を戻っていた。


 途中、遅ればせながら追い付いてきたナインマズルの応援と合流。ミズ・ウルティカのことを託し、俺と江奈はダンジョンを脱出。そのまま山を下ってきた。ナインマズルの応援が到着した時にダンジョンの入り口の仮設の施設は一度破棄されたと聞かされた。どうやら最高度の危険地域認定がなされたらしい。が、本当にひとっこ一人居ないのは驚いた。


 仕方なく、そのまま下山を開始した俺達。


 もうすぐ最寄りの冒険者協会の支部のある街に着く。俺はフードを目深にかぶり直す。

 取り敢えず、ここまで来ればモンスターのポップを気にする必要はないだろう。


 アクアを倒した段階で、ぼろぼろだった俺たちは結構ギリギリでここまで降りてきた。ダンジョンコアは未回収で、ダンジョンマスターたるアクアを倒しても、ダンジョンは生きたままだ。


 ぼろぼろで、あのまま下層を目指すなんて自殺行為に等しい。ダンジョンコアはひとまず諦めた。応援のナインマズル達の活躍に期待したい。


 俺は魔法銃をひとなでする。


「見えてきたわ」と江奈の声。


「良かった。腹へったー」と思わず愚痴が漏れる。


「宿を探しましょう。落ち着いたら、協会にいくわよ」と江奈の真面目な提案。


 俺は内心めんどくさいとは思いつつ、仕方ないかとあきらめる。


「はーい。でも、泊まるところを先に決めよう」


「ええ、それはそうね」


 そして最初に着いたホテルは見事に満室だった。次は営業しておらず、その次はまた満室。


「どうやらダンジョンから避難してきた人が皆ホテルに泊まってるみたいね」と江奈。


「そりゃそうだよな。しかも、ダンジョンの同時活性化で休みのところも多いんだろうし」


 俺たちはふらふらと街をさ迷う。じきに夕方になってきた。

 ──こんなときに、久しぶり野宿はやだな……。


「あっ」


 と、俺の足が一件の建物の前で止まる。


「どうしたの?」


「ここ、ネカフェだ」


 ふらふらと見慣れた看板に引き寄せられるように無意識のうちにドアを開ける。

 そこは、たまたまいつも使っていたネカフェの系列店。何と海外展開しているとは。


 俺は自然な流れで会員証を手品のように滑らかに取り出すと、俯き加減ですっとカウンターに差し出す。


「個室二つフラットシート、ステイパック十二時間で」


「お客様、申し訳ありませんが個室フラットシートは一つしか空いていません。いかがいたしますか?」


「あー、じゃあフラットシートとリクライニングで」


 さくっと手続きを終わらせると、遠慮する江奈にフラットシートの個室を譲り、俺は早足でリクライニングチェアの個室へと、入る。

 フード付きコートをコートかけにかけると、ゆっくりと目の前のリクライニングチェアに身を委ねる。


 それは懐かしく、至福の時。


 ゆったりと身体が支えられる。すっかり慣れ親しんだリクライニングチェアの手触り。


 ──こうしていると、スキルを手に入れてからの事がまるで夢みたいだ


 そんな益体もない事を考えつつ、俺は久しぶりの安住の地にて、いつしかそのまま眠りに落ちていた。


 第一章 完

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