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合流

 槍を支えに片膝をつく。

 その状態でとんっと槍の石突きを地面に打ち付けた時だった。


 俺は自分の中のイドが急激に槍に吸いとられていくのを感じる。体内のイドの約半分を奪い、槍の穂先で発生する雷。

 それが、タイムラグ無しで石突きを通っていく。地面を這うように四方へ広がる雷。


 ドームの床、全てを覆うように雷が広がっていく。


 目前まで迫っていたスライムの壁。そこに通電し、一気に四散させていく。

 とどろく爆発音。

 飛び散る液体。


 槍の穂先でまだ燻っていた雷が、俺にかかりそうに飛び散って来た粘液に反応して放電。一瞬にして焼き尽くしていく。

 漂う異臭はオゾン臭と焼け焦げた粘液の混じりあった物。


 空間を埋める飛び散った粘液と異臭を突き破るようにして、アクアが飛びかかってくる。

 つき出されたアクアの右腕。変形し鋭く尖ったそれを、俺は手にした槍で受け止める。

 一瞬の均衡。しかしすぐに碎け散る槍。


 ──脆くなっていた?!


 後ろに倒れ込むようにして、回避。しかし避けきれず、アクアの手刀が額を掠める。

 飛び散る血飛沫。

 咄嗟に体をひねり、目に入るのを防ぐと、飛行スキルで離脱する。


 ドーム天井付近まで一気に飛び上がり、重力軽減操作を併用して天井に着地。


「朽木っ、屈んでっ!」その時だった、江奈の声が響く。


 咄嗟に天井に張り付く俺。

 ドームの反対側の穴からから顔を出した江奈。その手に握られた魔法銃が七色の魔法弾を打ち出す。

 俺の頭上を越え、背後に迫っていた透明な何かに着弾する。

 振り向いた俺の目の前で、透明だったそれが姿を現す。


「アサシンスライムよ! まだいる! 天井を離れて!」と再び江奈の叫び。


「ちっ、余計なの来たの」


 俺は急ぎ天井を離れる。どうやら俺が天井に逃げるのはアクアに読まれていたようだ。透明になれるスライムを潜ませていた様子。


「江奈さん、無事で良かった。ありがとう! どうやってここへ?」


「多分、ダンジョンのスライムが全部集まって来ているわ。その動きを追ってきたの。おしゃべりは後よ!」と江奈が俺には見えない敵に向かって次々に魔法弾を放つ。


 江奈の方を向くアクア。何か仕掛けようとした様子。

 俺はカニさんミトンに装備を換装しながら、垂直に落下するようにしてアクアに襲いかかる。

 左手を巨大化し、つきだしているアクア。

 俺も溢れんはかりのイドで強制酸化を発動したカニさんミトンをアクアの左手に叩きつける。

 接触面から水蒸気が吹き出し、酸化したアクアの粘液がボタボタと落ちていく。

 その陰で、こっそりとインビジブルハンドを発動。俺はアクアの背中から、インビジブルハンドを突き立てる。


「もらった!」とそこで油断してしまった俺。そんな俺目掛け、粘体の槍が迫る。床に広がったスライム達の亡骸の粘液から飛び出した、槍。

 ──また、罠かっ。スライムが潜んでいた?


 インビジブルハンドを突き立てるのをやめ、俺はアクアから急速離脱する。

 今度は掠めることなく離脱。


「んっ?」俺は逃れた上空で、インビジブルハンドが何か掴んでいるのを感じる。

 インビジブルハンドを操作し、確認する。それはアクアに奪われたダンジョンコアを包んでいた繭だった。


 俺はつかみ取ると、勇んで繭を割ってみる。


「──空だ」


「ばーかばーか。当然、空に決まっているの」と俺の様子を見て煽ってくるアクア。どうやらわざとインビジブルハンドに握らせたようだ。


 繭の糸がほどけていく。その時だった。俺の漆黒に染まっていた手に繭の糸が巻き付いていく。

 ググリングを失ったときに感じた灼熱感が再び襲ってくる。


「ぐぅ、ぁぁっ」もう声も出ない痛み。


 繭の糸が漆黒に染まっていく。それと共に俺の手の色が失われていく。

 完全に漆黒に染まった繭の糸が蠢き出す。




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