表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/174

二つ名

 急速に間合いを詰めてくるミズ・ウルティカ。


 俺は模擬戦で、いやというほどミズウルティカの近接戦闘の餌食になった。その経験から、咄嗟に飛行スキルと重力軽減操作を発動し、バックステップ。


 目の前を通りすぎる銀光。

 それは、銃剣の切り払いの残影だった。


 俺は、何とかミズ・ウルティカの初撃をかわしていた。


 すかさず放たれる銃剣の追撃の刺突。俺は何とか発動の間に合った飛行スキルで、空へ逃れる。


「ミズ・ウルティカ! どうしたっていうんですかっ!」俺は空中に浮かびながら怒鳴るように問いかける。


「ウウウゥ……」ミズ・ウルティカの口から漏れるのは、聞き取りずらい、うめき声だけ。

 獣のように、姿勢を低くし、ミズ・ウルティカはスーツに包まれた肢体を躍動させながら銃剣を構え、走り出す。


 直接攻撃は明らかに届かない高さに滞空しているはずの俺。しかしその様子に一抹の不安が沸き上がってくる。


「やめてください、ミズ・ウルティカ! 俺のことはわかるんでしょう?! どうしたって言うんですかっ」と、何とか攻撃を制止しようと声をかける。


 高速で駆け巡りながら銃口を俺に向け、銃剣の引き金を引き絞るミズ・ウルティカ。


 衝撃を覚悟する俺。


 しかし、その銃口からは何も発射されない。

 魔法銃特有の魔法光のマズルフラッシュすら、ない。それでも、彼女は駆けながら引き金を引き続ける。


 俺は一向に発射されない銃弾と、それでも引き金を引き続けるミズ・ウルティカに、薄気味が悪くなってくる。頭によぎるのは、『不発弾』というミズ・ウルティカの二つ名。


 俺はそれを、てっきり称賛を込め、皮肉の効いた二つ名とばかり思っていた。

 魔法銃を撃てないハンディ。それを圧倒的な銃剣術の技量で凌駕し、覆してきた事への、称賛。


 しかし、それが大きな勘違いだったとしたら。


 圧倒的な銃剣術の技量とは別に、ミズ・ウルティカが当然複数のスキルを保有していることは、想像として妥当だろう。


 何せ、ナインマズルの五位、なのだ。


 数多のガンスリンガー達の頂点。

 そんな彼女がただ魔法銃が撃てないと言うだけの二つ名を冠するだろうか。

 そう、例えば『不発弾』と言うスキルだとしたら。


 俺が忍び寄る不安に思考が加速しかけた時だった。急にミズ・ウルティカが、立ち止まる。


「は、や……。に、げてぇ」再度告げられたのは、逃避の指示。


 しかし、それはあまりに遅すぎた。

 俺を取り囲むように急に現れた、無数の魔法弾の光。


 ──そのすべてが、俺に向かって殺到する。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ