通路の先は
俺たちはあれからかなり歩いて、ようやく通路を抜ける。
その先は、なんと、水の沸きだす泉を中心としたセーフティゾーンだった。
俺はステータスの表示が出ないことを確認して、ほっと息をつく。
とりあえず俺達は一時、休憩をとることにした。
「やれやれ、水、こんなにいらなかったな」と俺は荷物を下ろしながら思わず愚痴ってしまう。
「結果的にはそうですね。でも、絶対に必要な労力でした。水を確保できているという安心感は、何事とにも変えがたいものです。ご苦労様、朽木竜胆」とミズ・ウルティカに労られてしまう。
「あ、え、はい……」愚痴ってしまった自分が思わず恥ずかしくなる俺。
その後は軽食をとり、今後の方針について話し始める俺達。
「三層まで来れたわ。私の予想もいい方に外れ、無事にセーフティゾーンも見つけられた。これが普通の探索であれば十分な成果よ」とミズ・ウルティカ。
「そうですね。そして、この流れですと次の階層への扉は探索に時間がかかりそうです。一度帰還するのが順当かと」と江奈。
俺は二人のやり取りを静観している。静かに、そして冷静な判断を下している江奈の横顔を見て、何が言えようか。これで江奈が強硬に探索継続を唱えていれば口出しもするが。
小休止を終えた俺達は、帰還するためにセーフティゾーンを出発する。
僅かな下り坂に、かわらず表面を流れる水。
行きよりも滑りやすさが増している気がする。
思わずその事を口にしてします。
「江奈さん、なんだか滑りやすさが増してない?」
「下り坂だからじゃないの?」と江奈。
「いえ、少し待ってください……」俺達のやり取りにミズ・ウルティカが待ったをかける。
「これはっ! スライムですっ。警戒っ……」
ミズ・ウルティカが叫ぼうとした時だった。
トンネルを流れる水かさが急激に増加する。足元を掬われる俺達。
その俺達を、水に紛れて流れてきた大量のスライムが押しつつむ。
スライムの急流になすすべもなく流される俺達。
衝撃と共に、俺達はトンネルの中を一気に下っていく。
俺は流れるスライムにもみくちゃにされながら、何とか、カニさんミトンで強制酸化を発動する。
カニさんミトンの周囲のスライムが弾け飛ぶ。しかし、次から次に流れてくるスライムがその隙間を埋めていく。
その間にもどんどんと流され続けていく。
急に視界が開ける。
それと共に、もみくちゃにされていた体がスライムの急流から放り出される。
俺は気がつくと、一人、がらんとした空間に居た。