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ミョルニル

 そのあとは一方的だった。


 俺は重力と電気で髪を逆立てながら、両手で握ったトンカチにイドを注ぎ続ける。

 放電を続けるトンカチ。


 大部分は空気の絶縁を数メートル破ると、天井へと流れていってしまう。

 しかし、黒いつぶつぶスライムが近づく度に、そちらに引かれるように紫電の光が、一撫でしていく。


 あっという間に電気分解を起こし、爆発するように破裂していくスライム達。

 それはまるで黒くてどろどろの花が咲き乱れるかのようだ。


 飛び散る黒い液体が顔にかかる度に手で拭いたくなるのを我慢しながら、俺はひたすらトンカチに両手でイドを注ぎ続けた。


 気がつけば、辺りにはトンカチの発する空気を突き破る轟音だけが響いている。俺はイドの注入を止め、ゆっくりと周囲を見渡す。

 天井に飛び散った黒い液体がボタボタと落下している。


「終わった……みたいだな」


 まるでその言葉が切っ掛けだったかのように。

 俺の足元から、キラキラと輝く立方体がゆっくりと回転しながら浮かび上がってくる。


「うわっ」


 思わず飛び上がり避ける俺。

 そこへ丁度天井から垂れてきた黒い液体が、俺の顔面を直撃する。


「ベェっ、ぺっ。……はぁ、少し口に入った」


 俺がもちゃもちゃしている間に、ゆっくりと天井から地面に向かって下降し続ける立方体。回転に合わせ、ミラーボールのようにキラキラとした光が靄の壁を照らす。

 俺は急いで顔を拭うと、速度をあわせて飛行スキルでそれを追いかけるように下降していく。


 他の場所の上昇限界高度を過ぎると、地面からこちらを見上げる江奈達の姿が見えてくる。

 一瞬迷うが、俺は下降速度を上げ、江奈達に合流する。


「真っ黒ですね。凄い轟音でしたが?」とミズ・ウルティカ。


「ひどい目に会いました。ダンジョンマスターの性悪な性格が滲み出ていて嫌になりますね」と俺。


「そうですか。朽木竜胆、貴方は、アクアの事をまるで悪友のように語るのですね」


「そんなことは……」


 俺は無意識のうちに左手で、一度穴だらけになった自身の顔面を一撫でする。

 くだらないやり取りをしている間に地面の高さまで降下してきた立方体。そのまま宙にとどまると急速に回転が速くなる。


「ヤバイっ、伏せ……」


 俺が言い終わらないうちに咄嗟に皆伏せ、防御体勢を取る。

 高速で回転していた立方体が爆発する。飛び散る黒い液体。


 トンネルの真上で爆発した立方体。

 少し離れていたのが幸いし、俺はそこまでひどい被害にはあわずに済んだ。


「なんだか、ねちょねちょするわね……」


 江奈が愚痴るのを横目に見つつ、トンネルの上を向くと、そこには階層を移動するための扉が出現していた。


「どうやら、ループ自体も解除されたようですね」と、遠方を眺めていたミズ・ウルティカ。


 俺もつられて見ると、靄のなか、ずっと続いているように見えたダンジョンのフロア部分が消えていた。周囲には壁が出現しているのが、遠くに見える。


 俺たちは落とせるだけの汚れを落とすと、トンネルの壁面を昇り始める。俺が飛行スキルで運んだ。


 そうして、ようやく三層へと続く扉へと、足を踏み入れた。




今回は、いつにも増して化学的物理的整合性を取っておりません。

見た目優先のご都合主義の描写となりますがご了承頂けたらと思います。

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