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三時間後

 俺達は無事に一層を通り抜け、二層へと繋がる扉の前に来ていた。


「一層のフロア自体は変わっていなかったのに……」と江奈。


「ええ、このタイプの扉は見たことがありません。」


 と、応えるミズ・ウルティカの視線の先には、宙に浮く、穴が。


 扉の枠のようなものが一切ない、空間に出来た時空の断裂のようなそれ。かつて俺が見た扉は、規則的に収縮と拡張を繰り返していたが、この扉はそんな様子もなく。

 ただ、その縁が、うにうにと蠢くように蠕動を繰り返していた。


「フロアに変更がない以上、二層への扉の場所はここで間違いがないでしょう。私から行きます」


 そういうと、銃剣を抜き放ち、ゆっくりと扉へと近づいて行くミズ・ウルティカ。

 伸ばした片腕から、ゆっくとその身を沈めていく。


 完全にミズ・ウルティカの体が扉へと消える。しばらくして、ミズ・ウルティカがその穴から顔を出す。


「大丈夫です。行き来も出来そうですね。ただ、二層はフロアが変わっています。十分に警戒してこちらへ」


 そう言ってミズ・ウルティカの顔が引っ込む。


 江奈も魔法銃を抜き、扉へと進む。俺もホッパーソードを構え、そのあとに続く。


 目の前で江奈のうしろ姿が穴へと沈んでいく。俺も遅れないように、そこへ身を沈めていく。

 何の抵抗感もなく。次の瞬間、俺は扉の先にいた。


 そこは大理石で出来た世界だった。まるで神殿かと思うような回廊。

 その時だった。甲高いサイレンのような音が鳴り響く。


「アラームの罠ですっ! 総員、警戒体制っ」とミズ・ウルティカ。


 俺は一瞬、リュックを捨てるか迷う。


「迎撃優先っ、荷物を中心に円陣を!」


 何かを発見したらしいミズ・ウルティカの指示で、急ぎリュックを外す。荷物を背に、警戒体制を取ると、イド・エキスカベータを発動しておく。

 黒く輝く俺の瞳。


──指示があると、こんなに違うのか。タイミング的にさっきのアラームは発動は俺に反応した気がする。とすると、俺の位置はアクアに筒抜けかもな


 そうしているうちに、俺にも敵の姿が見えてきた。

 それは無数の黒いつぶつぶのようだった。


 壁から、床から、そして大理石の柱の影から涌き出てくる。


「白い床に黒いつぶつぶ……。タピオカミルクティー?」


 思わず漏れる俺の呟き。もちろん江奈達には黙殺される。


「ブラックスライムの亜種ですっ! 気を付けて。速いですよ」


 そのミズ・ウルティカの声が合図だったかのように、無数の黒いつぶつぶ達が、高速で跳ね回り始める。


──旅の途中で、苦戦してアクアを呼び出したからな。この手の敵が俺と江奈さんが苦手だと、当然ばれてるよね。


 俺は敵の様子を見て、内心苦虫を噛み潰す。

 その間にも、互いにぶつかり、軌道を変え、不規則に空間を埋めていくブラックスライム達。互いにぶつかる度に加速して行く。

 そしてついに、黒いつぶつぶの集合体が、俺たちへと襲いかかってきた。



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