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斥候任務

 翌朝、全身の打撲と筋肉痛にさらされながら、俺はかつての焔の調べの断絶ダンジョンの入り口に向かっていた。

 一歩、進むごとに、どこかかしらが痛む。

 いつもなら気にならない装備品すらも鬱陶しい。


 痛みの泥沼を這いまわるような気分で、何とか入り口まで来る。

 すでにミズ・ウルティカと江奈が来ており、待たせてしまったみたいだ。


「すいません、遅れまし……」と俺が言い終わらないうちに、無言で差し出されるガラスビン。


「これは?」


「飲んでおいて。その様子だと、任務に支障が出るから。」とミズ・ウルティカ。


 俺は言われるがままに、ビンの中身の液体を飲み干す。無味無臭。水かと思ったその時だった。

 かっと体が熱くなる。

 何かが俺のイドとオドに働きかけてくるのがわかる。

 衝撃に思わずうずくまる。


 体に広がった熱は、しかし一瞬で引いていく。

 その熱の引きに合わせ、あれほど苛んでいた痛みが取り去られていく。


「これ、ポーションですかっ!?」


「そう、ダンジョン産の純正ポーションよ。どうやら体調は大丈夫のようね。」とミズ・ウルティカ。


 思わず江奈の方を向く。


「ええ、私も飲んだわ」と江奈。


「あの。これ、おいくらですか?」


 ミズ・ウルティカはにっこり笑って答える。


「経費で落とすから気にしないで。私のつけた傷だしね。さあ、こっちよ」


 そういうと、入り口の脇に建てられたテントへと進むミズ・ウルティカ。


「ここは?」俺は辺りを見回しながら訊く。


「物資置き場兼、入退管理用の簡易テントよ。これが、ダンジョンアタック用の物資。」


「あっ、昨日準備してくれていたんですね。」


「今朝まで、ね。マスター・マスカルのとこの門人達が駆けずり回って集めてくれた物資よ。ついでにその際に一層に侵入した時の報告書。目を通しといて。」


 と言って俺は紙を渡される。マスター・マスカルの門人達とやらは、物資調達のために一層の家の跡地を駆けずり回ったのだろう。A4一枚のそれは、しかしその努力を知っていると何故か重みを感じるものであった。


 内容は、ポップしたモンスターに、通行に適した道をメインに書かれていた。


「……スライム以外のモンスター出たのか。ふむ、ただ、出たのはブラックベリーラットか。一層では、よくいるモンスターだったよな。」


 俺の潜っていたダンジョンは一層はダンジョンロックコーチしか出ない所だったが、同じくらい一層はブラックラットしか出ないダンジョンも多い。それ自体はダンジョンとしては普通の状態といえる。


「アクアがダンジョンマスターのダンジョンが普通のダンジョンと同じという時点で胡散臭いけど。」


 思っていた事が独り言となって溢れる。そして、読み進めていくと、最後の一文に、気になるコメントがあった。


「常に見られている気がする……?」

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