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ほの暗い影

 ぽつん、ぽつんと電気の照明のついた廊下を、ゆっくりと進む。あまり明るくない照明だ。古くさい型をしているせいか、時たま点滅するように瞬く。


 俺は重力軽減操作をかけ、できるだけ足音を立てないようにして、進んでいく。


 電気の明かりの届かない所が、やけに暗く感じる。

 すぐとなりは、原チャの運転手達の眠る隣の部屋のドア。


 俺は緊急時ということで、ドアと壁の隙間にホッパーソードを押し込み、鍵の部分を切り落とす。

 ピンクキャンサーの甲羅を突き刺すのに苦労していた時のことを、何故か思い出しながら、扉を開け、ゆっくりと室内を伺う。


(異常は……。ないな。)


 高いびきをかいている二人の様子だけ確認すると、そのまま扉を閉める。


 後方で警戒を続けている江奈に、クリアと手で伝える。また廊下を進む。

 何個かの照明と、何故か深く感じられるその間の影を通りすぎ、一階に向かう階段まで来た時だった。

 今、通りすぎばかりの影から、突然、何かが飛び出してくる。


「クチキっ!」


 撃ち出された江奈の魔法弾が、その何かに命中し、弾く。


 俺は身を翻し、何かが撃ち出されたと思わしき影に向かってホッパーソードを振るう。

 床と壁を切り裂く感触。


(手応えが、ない?)


 俺は急ぎ江奈の元まで走る。江奈と背中合わせになり全方位を警戒する。


 今度は別の影から、何かが飛んでくる。

 次は、俺がホッパーソードで、それを切り払う。


 同時に、江奈の魔法弾がその影に撃ちこまれる。

 しかめられる、江奈の眉。


「ダメだわ。警戒、継続してっ!」


 江奈の声。

 やはり手応えがない様子だ。


「クチキ、切り払ったものが何かわかる?」


 江奈の問いに、俺は周囲に視線を巡らす。

 闇が濃いとはいえ、照明はある。しかし、何もそれらしきものが見当たらない。


「すまん、わからん。剣の感触では、意外と柔らかい感じもしたけど。」


 俺は、そういえば切り払ったとはいえ、切断した感じがなかったことを江奈に言われて思い出す。


「うえよっ!」


 今度は天井の隅からの攻撃。しかも、別々の場所から二ヶ所同時に放たれる、何か。


 江奈が俺の左肩に乗せるように腕を伸ばし、俺の切りにくい左前方上からの攻撃を打ち落とす。


 俺はそれを見届けることなく、くるりと江奈と位置を入れ換えるように回転。


 江奈を狙った頭上からの攻撃。

 俺はあえてホッパーソードの腹の部分で受け流すようにして、その何かの攻撃を受ける。


「?」


 まるで意思を持つかのように。その何かは進入角度と垂直に回転して、俺の視界から消える。


 その様子を目のはしに捉えていた江奈。


「あれが、本体。しかも二体以上ね。」


「ぽい、ねっ!」


 話している間にも、立て続けの再度の攻撃。今回は一体。

 話ながら、切り払う。


「見たことないモンスターだわ。搦め手タイプ。突進力はないけど、厄介ね。」


「どうして搦め手だと?」


 俺は周囲に視線をやりながら、気になったので聞いてみる。


「影を移動しているふしが高い。それなのに、私たちの足裏からは攻撃してこない。逆に、これまでの攻撃は、全て私たちの素肌が見えている部分を狙ってた。」


 早口で説明してくれる江奈。


「つまり、接触型の、毒か精神作用系の攻撃がメインね。後は影を濃くするような環境作用系の能力のある奴等は、だいたい搦め手なのよ。」


 俺は、途中まで論理的な感じだったのに、結局最後は勘なのが江奈さんらしいと思う。そして、打開策を求め、自らの手持ちのスキルを必死に検討していた。

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